面接で退職理由を聞かれたら、事実は変えずに、「次の職場で何をしたいか」につなげて伝えるのが基本です。前の職場への不満をそのまま話すと、「うちでも辞めるのでは」と受け取られやすいためです。看護師が辞める理由には、人間関係・夜勤や長時間労働・ライフステージの変化など、複数の要因が重なります。日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」では、病院の正規雇用看護職員の離職率は11.8%(2022年度)でした(最新の2024年調査では11.3%(2023年度))。ここでは退職理由の代表的な5パターンと、面接で使える言い換えを例文つきで整理しました。
看護師の退職理由の代表的な5パターンは?
看護師が辞める理由は、人間関係、夜勤・長時間労働、ライフステージの変化、キャリアの行き詰まり、給与への不満の五つに分けて整理できます。
人間関係
上司や先輩との関係、パワハラ、派閥などは、退職理由として語られやすいものです。日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」では、看護管理者が考える新卒看護師の退職理由(5つまでの複数回答)で「上司・同僚との人間関係」を挙げた病院は27.6%(n=1,126病院)でした。看護職員全体の退職理由の割合ではない点には注意してください。日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」では、パワハラを受けたことが「よくある」「ときどきある」と答えた看護職員は合わせて34.5%、セクハラは15.0%でした。閉鎖的になりやすい病棟では、一度関係がこじれると逃げ場がなくなりやすいです。
夜勤・長時間労働
夜勤の回数の多さ、慢性的な残業、勤務間インターバルの不足が挙げられます。体調を崩して辞める人もいます。日本看護協会は、夜勤・交代制勤務に関するガイドラインを公表しています。夜勤の限界年齢についてはこちらも参考にしてください。
ライフステージの変化
結婚、出産、育児、介護といった人生の転機に、勤務形態が合わなくなることがあります。復職しても、夜勤との両立が難しくなる場合があります。
キャリアの行き詰まり
「同じ病棟で同じ業務の繰り返し。成長している実感がない」と、経験を重ねた頃に感じる人もいます。辞めたいというより、次に進みたい気持ちです。目標管理シートの書き方を見直すことで、現職でのキャリアの方向性が見えてくることもあります。
給与への不満
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」では、看護師(企業規模10人以上・男女計)の「きまって支給する現金給与額」の12か月分と「年間賞与その他特別給与額」を足すと約525万円(算式値)です。国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」の、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円です。調査の対象や算出方法が異なるため単純には比べられませんが、数字の上では看護師のほうが高くなっています。それでも、仕事量に見合わないと感じる人はいます。給与だけが理由というより、他の不満と重なって退職を考える人もいます。
面接での退職理由はどう言い換える?
面接では、本音の中身は変えずに、言い方を置き換えて伝えます。退職理由の例文を、パターンごとに紹介します。
人間関係 → チーム環境への希望に変換
本音: 上司のパワハラが辛くて辞めた
面接では: 「チームで意見を出し合いながらケアの質を高められる環境で働きたいと考え、転職を決めました。前職でもチーム医療を大切にしていましたが、より風通しの良い環境で力を発揮したいと思っています。」
前の職場は批判せず、「次はこういう環境で」と話の向きを先へ変えます。
夜勤の負担 → 長く続けるための判断に変換
本音: 月9回の夜勤で体を壊しかけた
面接では: 「看護の仕事を長く続けるために、自分の体力や生活リズムに合った働き方を見直したいと考えました。夜勤の負担に配慮された勤務体制のもとで、質の高いケアを提供し続けたいです。夜勤勤務で培った急変対応力やアセスメント力は、新しい環境でも活かせると考えています。」
「長く続けるための選択」として伝えると、逃げた印象を持たれにくくなります。
ライフステージ → 働く意欲とセットで伝える
本音: 子育てと夜勤の両立が無理だった
面接では: 「出産を機に勤務形態を見直す必要がありました。育児と両立しながらも看護師として成長し続けたいと考え、御施設の日勤常勤制度に魅力を感じています。」
ライフステージの変化は、そのまま伝えて大丈夫です。その上で、働き続ける意欲を言葉にします。
キャリアの行き詰まり → 次のステップへの挑戦に変換
本音: 同じ業務の繰り返しで成長を感じられなくなった
面接では: 「急性期病棟で4年間の経験を積む中で、退院後の患者さんの生活に関心を持つようになりました。年間約150名の退院支援に関わった経験を活かしつつ、看護の幅を広げたいと考えています。」
「飽きた」は「次に進みたい」と、成長意欲に置き換えて伝えます。
給与 → 待遇+キャリアの両面で語る
本音: 基本給が思ったより低く、生活が厳しい
面接では: 「自分のスキルや経験に見合った評価を受けられる環境で、より高い目標を持って働きたいと考えました。待遇面だけでなく、御施設の教育体制やキャリアパスにも魅力を感じています。」
給与だけを理由にせず、「待遇もキャリアも」の両面で志望していると伝えましょう。
退職理由の言い換えを一覧で見るには?
本音の退職理由と、面接での言い換え例を並べます。自分の経験に合わせて言葉を足してください。
| 本音の退職理由 | 面接での言い換え例 |
|---|---|
| 上司のパワハラ | 「チームで協力しながらケアの質を高められる環境で働きたい」 |
| 夜勤がきつい | 「看護を長く続けるために、自分に合った勤務形態を選びたい」 |
| 子育てとの両立が無理 | 「育児と両立しながらも看護師として成長し続けたい」 |
| 成長できない・飽きた | 「○○の経験を活かしつつ、看護の幅を広げたい」 |
| 給料が安い | 「スキルに見合った評価を受けられる環境で目標を持って働きたい」 |
| 残業が多い | 「ワークライフバランスを保ちながら質の高い看護を提供したい」 |
| 医師との関係が悪い | 「多職種が対等に意見を言い合える環境で力を発揮したい」 |
押さえるのは3つです。前の職場を批判しないこと、自分で選んだ転職として話すこと、志望先で何をしたいかにつなげることです。
転職回数が多い場合はどう伝える?
転職回数が多くても、各職場で得たことと、次の職場を選んだ理由を一貫して語れば伝わります。冒頭の離職率のとおり、看護師が職場を離れること自体は特別ではありません。ただし面接官が気にしているのは、回数そのものより「この人はうちでも辞めるのか」です。
2〜3回の転職: 各職場で「何を得たか」を整理して伝えましょう。例えば「急性期で急変対応を学び、回復期で退院支援の経験を積みました。次は在宅まで見据えた看護がしたい」のように、経験が一本の線でつながる順に話します。軸が見えれば、回数そのものは問題になりにくくなります。
4回以上の転職: すべてを説明する必要はありません。直近2〜3回の転職に絞り、「なぜ御施設なら長く働けると考えたか」に時間を使います。勤務体制、教育制度、理念など、選んだ理由が具体的なほど説得力が出ます。
転職回数を気にして「もう少し我慢すべきか」と迷うこともあると思います。続けるか変えるかは人それぞれで、正解はひとつではありません。面接で問われるのは、次の職場で「なぜここなのか」を自分の言葉で説明できるかどうかです。
言い換えが当てはまらない場面: 募集要項と実際の勤務条件が違っていた、賃金の未払いがあった、ハラスメントで心身を壊したなど、退職の理由が職場側の明らかな問題にある場合は、無理に言い換えなくてかまいません。事実を短く伝え、「次は条件を確かめてから入職したい」と続ければ十分です。ハラスメントや労働条件の相談先は、厚生労働省の総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局)にあります。
面接で避けたいことは?
面接で避けたいのは、前の職場の悪口、嘘、「特にありません」という答えの三つです。
前の職場の悪口は避けましょう。 どんなに辛い経験をしても、面接で前職を批判するとマイナスに受け取られやすいです。「うちに来ても不満を言うんだろうな」と思われかねません。前職への不満を述べる時は、事実と今後の希望を分けて話すと伝わりやすくなります。
嘘をつかないでください。 前職の様子を掘り下げて聞かれると、作った話は筋が合わなくなります。
「特にありません」と答えるのも避けましょう。 退職理由がないのに転職する人はいません。答えないのは不信感に直結します。
退職理由は「武器」にできる?
伝え方次第で、退職理由は「この人は次に何をしたいのか」を示す材料になります。本音は変えずに、志望先で何をしたいかへつなげて話してください。
伝え方に迷ったら、一人で悩まず相談してください。with Nursing の LINE 相談では、退職理由の整理をお手伝いしています。応募する求人が決まったら、面接の準備や書類の見直し、条件の相談も一緒に進めます。無理に転職を勧めることはありません。今の職場で続けるか変えるかを考えるところからでも大丈夫です。
よくある質問
Q. 退職理由は正直に話すべき?嘘をついてもバレない?
正直に話してください。ただし、言い換えと嘘は別物です。「パワハラで辞めた」を「チームで協力しながら看護の質を高められる環境を求めた」と言うのは言い換えです。「人間関係は良好でした」と言うのは嘘です。迷ったら、掘り下げて聞かれても具体的に説明できる内容かどうかで分けてください。
Q. 短期間(1年未満)で退職した場合、どう説明する?
事実と理由を簡潔に伝えた上で、「次はどんな環境で長く働きたいか」を具体的に語りましょう。例:「入職後に夜勤体制が募集要項と異なることがわかり、長期的に働くことが難しいと判断しました。御施設の○○という勤務体制なら、腰を据えて看護に取り組めると考えています。」日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」では、2022年度に採用した新卒看護職員(正規雇用)の離職率は10.2%でした(最新の2024年調査では8.8%(2023年度))。短期間で退職を経験する人もいますが、「次はここで長く働く」という意思を示すことが重要です。
Q. 退職理由を聞かれなかった場合、自分から話すべき?
話す必要はありません。ただし、志望動機の中に退職理由が自然に含まれているのが理想です。「病棟経験を活かして在宅看護に挑戦したい」と言えば、退職理由(病棟から出たい)と志望動機(訪問看護に進みたい)が一体で伝わります。聞かれなかったのは、履歴書や職務経歴書から面接官が既に把握している可能性が高いためです。
Q. 退職理由と志望動機が矛盾しないようにするには?
退職理由で「できなかったこと」を、志望動機で「次の職場でできること」として受ける形にします。たとえば退職理由が「夜勤との両立が難しい」なら、志望動機は「日勤常勤の体制で、長く腰を据えて働ける」になります。2つを別々に考えるとずれやすいので、1枚の紙に並べて書いてみてください。
Q. 前の職場の悪口にならない伝え方のコツは?
人でなく、仕組みや条件の話にすることです。「師長が厳しかった」を「教育の仕組みが整った環境で学び直したい」と言い換えれば、事実は変えずに批判の形を避けられます。そのうえで、志望先の何に惹かれたかを具体的に添えます。

