派遣看護師や応援ナースは、時給や月給が高く見えても、ボーナス・退職金・昇給の面で差が出やすく、長い目で見ると正社員より収入が増えるとは限りません。
「派遣のほうが時給が高い」「応援ナースなら月給が高い」——SNSでこうした情報を見て、派遣を検討する看護師もいます。どちらも期間を区切って使えば役に立つ働き方です。比べるときは、月の額でなく年単位の総額で見ると差が見えます。
派遣看護師と応援ナースの違いは?
派遣看護師は派遣会社が雇用主で、応援ナースは勤務先の病院が直接雇用する期間限定の契約です。まず制度の違いを整理しておきます。なお、厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」のとおり、病院・診療所・介護老人保健施設・利用者の居宅で行う看護の業務は、原則として派遣ができません。例外は、紹介予定派遣(派遣期間のあとに直接雇用を前提とする形)、産休・育休・介護休業を取った人の代わりに働く場合などです。特別養護老人ホームなどの社会福祉施設で行う看護の業務は、派遣の対象になります。派遣の求人が介護施設に多いのはこのためです。
| 項目 | 派遣看護師 | 応援ナース |
|---|---|---|
| 雇用主 | 派遣会社 | 勤務先の病院(直接雇用・期間限定) |
| 契約期間 | 短期〜数か月(更新あり) | 期間を限った契約 |
| 住居 | 自己手配 | 寮・家具付き住居を病院が用意 |
| 赴任費用 | 自己負担 | 病院負担(往復支給が多い) |
どちらも「正社員ではない」という点は共通しています。
時給は高く見えるのに、トータルでは損をしやすいのはなぜ?
時給や月給は高く見えても、ボーナス、退職金、昇給、社会保険といった面で、正社員との差が出やすいためです。派遣看護師や応援ナースには、パートより時給や月給が高く見える求人があります。正社員と比べるときに見落としやすいのは、次の4つです。
- 賞与: 正社員に賞与が出る職場でも、派遣の契約には付かないことがあります
- 退職金: 勤続年数に応じて積み上がる仕組みは、短い契約を重ねる働き方では効きにくくなります
- 昇給: 正社員は年ごとの昇給がある職場が多い一方、派遣の時給は契約の更新時にしか見直されにくいです
- 社会保険: 契約の切れ目に空白ができると、国民健康保険などへの切り替えの手続きが要ります
月給だけ見ると「正社員より稼げる」と思えても、10年単位で足し上げると生涯収入に差がつくこともあります。
派遣はキャリアにどんな影響がある?
お金とは別に、キャリアへの影響もあります。短期職歴が並ぶ、スキルが偏る、チーム内で浮きやすいといった点が挙げられます。
履歴書に短期職歴が並びます。派遣先が半年で変わるたびに職歴が増えます。正社員に戻りたくなったとき、採用担当者に「なぜ定着しなかったのか」と聞かれることがあります。
スキルが偏ります。派遣先では即戦力を求められるため、自分がすでにできることしか任されにくくなります。新しい技術や知識を学ぶ機会は、正社員に比べて少なくなりがちです。
チームの中で立ち位置を作りにくくなります。期間が限られていると、委員会や教育の役割を任される機会が少なく、職場での信頼を積み上げる前に契約が終わることもあります。
それでも派遣を選ぶべき場面はある?
ごく限られた状況では、派遣が合理的な選択になることもあります。
- 育児・介護で常勤が物理的に無理な時期(週3日・時短で働きたい)
- 正社員の転職先が決まるまでの空白期間(ブランクを作らないため)
- 未経験の分野を短期間で試したい(ただし、派遣で働ける職場は上の法令で限られるので、先に勤務先の種類を確かめる)
どれも、いつまで・何のために派遣で働くかを先に決めておく使い方です。期限を決めずに続けると、上で挙げた賞与・退職金・職歴の差が年ごとに積み上がります。
「自由に働きたい」なら、派遣以外の選択肢はある?
派遣を考えるきっかけが「夜勤をなくしたい」「休みを自分で決めたい」なら、求めているのは雇用形態より働く条件のほうかもしれません。
夜勤のない正社員の求人は、病棟の外にもあります。ここでは、勤務が日中に収まりやすい順に、健診センター、クリニックの外来、訪問看護を挙げます。どれも、選べば条件が全部そろう職場ではありません。
- 健診センター:夜勤もオンコールもありません。その代わり給与はかなり低めで、身につく看護の幅も狭くなりやすい職場です。
- クリニックの外来:夜勤はありません。ただし土曜も診療する所が多く、残業が多い所もあります。少人数の職場なので、人間関係に左右されやすい面もあります。
- 訪問看護:病棟の夜勤はありませんが、夜間のオンコールがあります。自宅で待機し、緊急時に対応する形です。訪問先では急変時の初動を一人で担います。月の呼び出しの回数はステーションで大きく違うので、面接で実績を確かめてください。
雇用形態を変えなくても、職場を変えることで条件が合う場合があります。
先に「自分が変えたいのは何か」を書き出し、正社員の求人でそれが叶わないかを確かめてから、派遣を比べる順番がおすすめです。
ただし、1〜2年以内に引っ越しや家族の転勤が決まっている人や、近いうちに大学院や留学に進む予定がある人のように、働く期間が初めから限られている場合は別です。その場合は、賞与や退職金の差より、期間を区切って働ける自由のほうが大きくなります。
よくある質問
Q. 派遣看護師は病院で働けますか?
原則として働けません。厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」で、病院・診療所・介護老人保健施設・居宅での看護の業務は派遣ができないとされています。紹介予定派遣や、休業を取った人の代わりなどの例外があります。
Q. 派遣看護師はどんな職場で働いていますか?
特別養護老人ホームなどの社会福祉施設での看護の業務は、派遣の対象になります。健診や施設での業務の求人が中心になるので、病棟の経験をそのまま積みたい人には合いにくい働き方です。
Q. 応援ナースと派遣看護師の違いは?
雇用主が違います。応援ナースは勤務先の病院が期間を区切って直接雇用し、派遣看護師は派遣会社に雇われて派遣先で働きます。応援ナースは病院の直接雇用なので、病棟でも働けます。
Q. 派遣と正社員、年収で比べるときに何を見ればいいですか?
月給や時給でなく、賞与・退職金・昇給・社会保険を含めた年単位の総額で比べます。求人票で賞与の有無と、契約の更新時に時給が上がる仕組みがあるかを確かめてください。
Q. 派遣から正社員に戻るとき、不利になりますか?
短い職歴が続くと、面接で「なぜ定着しなかったのか」を聞かれることがあります。派遣を選んだ理由と期間をはじめから決めておき、それを説明できれば、不利を小さくできます。
どの働き方が合うか迷うときは、私たち with Nursingの LINE 相談もご利用ください。今の働き方や給与・条件を一緒に整理するお手伝いをしています。無理に転職を勧めることはありません。
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