病棟の夜勤をあと何年続けるか。そんなことを考えながら、訪問看護の求人を検索している。勤務地の候補に「大阪」が浮かんだなら、この記事が判断材料になるはずだ。
大阪府の訪問看護ステーション数は約2,200か所(厚生労働省「令和5年介護サービス施設・事業所調査」)。東京都に次ぐ全国2位の規模で、求人の選択肢が広い。給与は東京より低いが、家賃と物価の差を考えると手元に残るお金は同等以上になる。
大阪の訪問看護師、給与のリアルライン
大阪府の看護師の平均年収は約497万円(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」)。全国平均の約508万円をやや下回る水準だ。東京都は約520万円。その差は約23万円で、福岡や札幌ほどの開きはない。
訪問看護に絞ると、常勤の年収レンジはおおむね420〜500万円。オンコール手当・訪問件数による実績手当が上乗せされるステーションでは、500万円を超えるケースもある。
| 勤務先タイプ | 年収目安(大阪) |
|---|---|
| 訪問看護ステーション(常勤) | 420〜500万円 |
| 大学病院・公的病院(病棟) | 480〜550万円 |
| 中規模病院(200〜400床) | 430〜490万円 |
| クリニック | 360〜430万円 |
病棟夜勤ありの年収と訪問看護の年収を比べると、50万円前後の差が出ることが多い。ただし訪問看護は日勤ベースの働き方。夜勤手当がなくなる代わりに、体の消耗が減る。この「50万円分の価値」をどう見るかがポイントになる。
東京と比べた可処分所得——大阪が逆転する構造
額面の差は月2万円弱。しかし生活費の差はそれを上回る。
訪問看護師・30代前半・単身を想定して試算した(筆者試算)。
| 項目 | 東京(23区) | 大阪(市内中心部) |
|---|---|---|
| 手取り月収 | 約24万円 | 約22.5万円 |
| 家賃(1K〜1DK) | 8.5万円 | 5.8万円 |
| 食費 | 4.5万円 | 3.8万円 |
| 交通費(自己負担分) | 0.5万円 | 0.3万円 |
| その他生活費 | 5.0万円 | 4.5万円 |
| 手元に残る金額 | 約5.5万円 | 約8.1万円 |
月2.6万円、年間で約31万円の差。額面では東京が上でも、可処分所得では大阪が逆転する。家賃の差だけで月2.7万円あるのが大きい。
求人が多いエリアと、大阪ならではの地域差
大阪の訪問看護は、エリアによって特色がはっきり分かれる。
北摂エリア(豊中・吹田・箕面・高槻): 住宅街が広がり、在宅療養の需要が高い。大阪大学医学部附属病院や国立循環器病研究センターとの連携が活発なステーションもある。ファミリー層が多く、小児の訪問看護を扱うところも目立つ。家賃は市内中心部とほぼ同水準だが、住環境は落ち着いている。
大阪市内中心部(北区・中央区・天王寺区): ステーション数は最も多い。医療機関が密集しており、主治医との連携がスムーズ。移動距離が短く、1日の訪問件数を効率よくこなせるのが利点だ。
南部エリア(堺市・岸和田市・和泉市): 家賃が市内中心部より1〜2万円安い。高齢化率が高く、訪問看護の求人は安定している。自転車や原付での訪問が中心になるステーションが多い。
東部エリア(東大阪市・八尾市): 中小のステーションが点在。地域密着型で、利用者との関係が長期にわたるケースが多い。町工場が多い土地柄、労災後のリハビリ訪問なども一定の需要がある。
訪問看護で働くメリットと、正直なデメリット
大阪に限らず、訪問看護という働き方には病棟にないメリットがある。日勤中心で生活リズムが整う。一人ひとりの利用者にじっくり向き合える。病棟では見えなかった「暮らしの中のケア」を実践できる。
ただし、デメリットも正直に書く。
ひとつは急変時の初動を一人で担うこと。病棟ならナースコール一つでチームが動くが、訪問先では自分の判断がすべての起点になる。病棟経験3年以上が応募要件になっている求人が多いのは、この対応力が求められるからだ。
もうひとつは夜間オンコール。夜間オンコールは病棟の夜勤とは異なる。自宅待機しながら緊急時に対応する形で、対応が発生しない夜も多く、手当も支給される。ただし「電話が鳴るかもしれない」という心理的な負荷はゼロではない。ステーションによってオンコールの頻度は月4〜8回とばらつきがあるので、面接時に必ず確認したい。
こうしたデメリットを踏まえても、訪問看護はキャリアの選択肢として有力だ。急性期の経験を在宅で活かせる数少ないフィールドであり、大阪はその求人の母数が全国トップクラスに多い。
大阪で訪問看護を選ぶなら、動き方はひとつ
大阪は「東京ほど給与は高くないが、生活コストの低さで可処分所得が逆転する」街。訪問看護のステーション数は全国2位で、エリアごとに選択肢がある。
求人票だけではわからない情報も多い。オンコールの実態、ステーションの雰囲気、管理者の考え方。こうした部分は、現場を知っている人に聞くのが確実だ。
with Nursingでは、大阪の訪問看護への転職を含めたキャリア相談をLINEで受け付けている。
大阪の看護師の生活費事情については東京で働く看護師のリアルとの比較も参考になる。訪問看護という働き方そのものを詳しく知りたい場合は、訪問看護のキャリアガイドもあわせて読んでほしい。

