毎月の給料日、口座に振り込まれた額を見て真っ先に頭をよぎるのが「奨学金の引き落とし」。手取り22万円のうち2万円が自動で消えていく生活を、あと何年続けるのか——。3年目の病棟看護師なら、一度は計算したことがあるはずだ。
看護師が抱える奨学金は大きく2種類ある。日本学生支援機構(JASSO)の貸与型と、病院が独自に設ける奨学金(いわゆるお礼奉公付き)。それぞれ返済のルールも免除の条件もまったく違う。ここでは、どちらのタイプでも使える「返済を最短で終わらせる3つの戦略」を整理した。
看護師の奨学金、平均いくら借りている?
JASSOの調査によると、看護系学生の貸与額は月3〜8万円が多い。3年制の専門学校で月5万円を借りた場合、卒業時の借入総額は180万円。4年制大学なら240万円になる。
一方、病院奨学金は月3〜5万円が一般的で、3年間で108〜180万円。こちらは「指定病院で3〜5年間勤務すれば返済免除」という条件がつくことが多い。
| 種類 | 借入総額の目安 | 月々の返済額 | 返済期間 |
|---|---|---|---|
| JASSO第二種(専門3年) | 180万円 | 約13,000円 | 最長15年 |
| JASSO第二種(大学4年) | 240万円 | 約17,000円 | 最長15年 |
| 病院奨学金 | 108〜180万円 | 勤務で免除 or 一括返済 | 3〜5年(お礼奉公) |
15年かけて返すと、利息だけで数十万円上乗せされる。だから「どれだけ早く元本を減らせるか」が勝負になる。
お礼奉公の現実——途中退職するとどうなるか
病院奨学金を借りた看護師の多くが直面するのが「お礼奉公」の縛りだ。指定病院で3年、長いところでは5年勤務すれば返済が免除される仕組みだが、途中で退職すると残額の一括返済を求められることがある。
たとえば、総額180万円の病院奨学金を借りて2年目で退職した場合。勤務年数に応じた按分で計算されることが多く、残り3年分の108万円を退職時に請求されるケースがある。貯金がなければ、JASSOの奨学金と合わせて二重の返済を抱えることになる。
「つらくても3年は我慢しよう」と耐える看護師は多い。しかし、心身を壊してからでは遅い。途中退職を考えるなら、まず奨学金の契約書を読み直すこと。病院によっては分割返済に応じてくれる場合もあるし、退職後に別の系列病院に移れば免除が継続される制度を持つ法人もある。
戦略1:繰り上げ返済で利息を削る
JASSOの第二種奨学金(有利子)を借りている場合、繰り上げ返済の効果は大きい。
180万円を年利0.5%・15年で返済すると、利息総額は約7万円。年利1.0%なら約14万円。「たかが数万円」と思うかもしれないが、その数万円を自分の貯蓄や投資に回せると考えれば馬鹿にならない。
繰り上げ返済の具体的なやり方はシンプルだ。JASSOのスカラネット・パーソナルから「繰上返還申込」を選び、希望する回数分を指定するだけ。手数料はかからない。
ボーナス月に10万円ずつ繰り上げるだけで、返済期間は約3年短縮できる。年2回のボーナスで20万円。3年続ければ60万円の元本が前倒しで消える計算だ。
ただし、繰り上げ返済に全力を注いで手元の貯金がゼロになるのは危険だ。生活防衛資金として手取りの3ヶ月分(約60〜70万円)は残しておきたい。返済と貯蓄のバランスは「ライフプランシミュレーター」で試算してみるといい。
戦略2:返済免除・減額制度を使い切る
意外と知られていないが、JASSOには返済を減額・猶予できる制度がある。
- 減額返還制度:月々の返済額を1/2または1/3に減額できる。返済総額は変わらないが、毎月の負担が軽くなる。年収325万円以下が目安
- 返還期限猶予:最長10年まで返済を先送りできる。災害・傷病・経済困難が対象
- 所得連動返還方式:第一種(無利子)のみ。年収に応じて返済額が変動する
また、病院奨学金の場合は前述のとおり「指定期間の勤務で全額免除」が最大のメリットだ。3年の辛抱で180万円が消えるなら、時給換算で約2,500円分の上乗せを毎月もらっているのと同じことになる。
自治体独自の奨学金にも注目したい。たとえば、過疎地域や離島の病院で一定期間勤務すると返済が免除される都道府県の修学資金制度がある。北海道・東北・九州の地方自治体に多く、Uターン就職と組み合わせれば返済ゼロで生活コストも下がる。
戦略3:転職で年収を上げて返済原資を増やす
返済を加速する最も根本的な方法は、収入そのものを増やすことだ。
看護師の年収は、職場の種類と地域によって大きく変わる。たとえば、同じ3年目でも急性期病院と訪問看護ステーションでは年収に30〜60万円の差がつくことがある。訪問看護では基本給が高めに設定されていることに加え、オンコール手当やインセンティブが上乗せされるためだ(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」)。
年収が50万円上がれば、手取りベースで約35万円の増加。そのうち月2万円を繰り上げ返済に回すだけで、年間24万円の元本を前倒しで減らせる。180万円の奨学金なら、通常の返済と合わせて約5年で完済できる計算になる。
「お礼奉公が終わったら転職する」と決めているなら、その期間中に転職先の情報収集を始めておくのが賢い。お礼奉公の最終年度に入ってから動き始めると、焦って条件の悪い職場を選んでしまうリスクがある。
年収アップの具体的な手段は「看護師の年収を50万円上げる現実的な方法」にまとめている。
まずは自分の返済計画を数字で見る
奨学金の返済は、感情で悩むより数字で把握するほうが気持ちが楽になる。借入総額、月々の返済額、完済までの年数、その間に支払う利息。この4つを一度書き出してみるだけで、漠然とした不安がかなり小さくなる。
「繰り上げ返済に回せる金額は月いくらか」「転職したら手取りがどう変わるか」は、ライフプランシミュレーターで具体的にシミュレーションできる。奨学金の返済と将来の貯蓄を同時に考えたいなら、一度試してみてほしい。
返済計画やキャリアの方向性に迷ったら、LINEで相談してほしい。お礼奉公中の転職タイミングや、年収を上げるための職場選びについて、個別に話ができる。
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