看護師なのにお金が貯まらない、の正体

看護師の貯金が増えにくいのは、収入が低いからでも使い方が悪いからでもありません。不規則な勤務で支出が割高になること、夜勤手当を含めた収入に生活水準が合っていくこと、家計を整える余裕が残りにくいことが重なる、働き方の構造が原因です。

「看護師って給料いいんでしょ?」と言われるたびに、モヤッとします。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」では、看護師(企業規模10人以上・男女計)のきまって支給する現金給与額は月36.59万円、年間賞与その他特別給与額は85.64万円でした。月36.59万円×12か月に年間賞与85.64万円を足すと、年収の目安は約525万円になります。

国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」の平均給与は478万円(1年を通じて勤務した給与所得者)です。調査の対象や算出方法が異なるため単純には比べられませんが、数字の上では貯まらない水準ではありません。それでも通帳の残高が増えないのは、収入の額とは別のところに理由があるからです。

この記事では、その理由を5つに分けて整理します。責めるつもりはありません。「なるほど、だから貯まらなかったのか」と腑に落ちてもらえたら嬉しいです。

不規則な勤務は、なぜ割高な生活費を生む?

不規則な勤務は自炊の余裕を奪い、コンビニやデリバリーなどの割高な支出を増やします。

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看護師の勤務は、日勤・準夜勤・深夜勤の三交代や、日勤・夜勤の二交代が基本です。生活リズムが毎週変わると、食材を買って調理する段取りが組みにくくなります。

夜勤明けにコンビニで買う朝食、遅い時間に帰宅して頼むデリバリー、疲れて乗るタクシー。一つひとつは数百円から数千円でも、積み重なると月の支出表に表れます。

これは浪費というより、生活を回すためのコストです。意志の問題にする前に、勤務の形が支出の形をつくっていると見るほうが実態に合っています。

ストレス発散が「ご褒美消費」になりやすいのはなぜ?

仕事の緊張が続くと、回復の手段として買い物や外食が選ばれやすくなるためです。

命を預かる仕事には、判断の重さがあります。患者さんやご家族との感情的なやりとり、職場の人間関係の緊張も重なります。

その重さを、買い物や外食で発散するのは自然なことです。「頑張った自分にご褒美」は、気持ちのバランスを保つ手段でもあります。

ただ、これが毎月のように続くと、支出の枠が少しずつ広がります。ご褒美をやめるより、ご褒美の予算をあらかじめ家計の中に置いておくほうが続けやすい形です。

夜勤手当込みの生活は、なぜ崩れやすい?

夜勤手当を含めた手取りに生活水準を合わせると、夜勤の回数が変わった時に家計が揺れやすくなります。

日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」では、夜勤手当(1回あたり)の平均は二交代制で11,368円、三交代制で準夜勤4,234円・深夜勤5,199円でした(定額の夜勤手当を支給する病院・平日)。手当の額は病院ごとに違うので、まずは自分の給与明細で夜勤手当がいくら入っているかを見てください。

この手当込みの手取りに慣れると、「自分はこれくらい稼いでいる」という基準ができます。住まいやサブスクなど毎月かかる固定費をその基準で決めると、夜勤の回数が減った月に、収入だけが先に下がります。

体調、家庭の事情、働き方の見直しなどで夜勤の回数が変わる場面は、誰にでもあり得ます。手当を「入ればうれしい上乗せ」として扱い、固定費は手当を除いた収入で組む。この区別が、夜勤手当のある仕事で家計を守る基本です。

お金を考える余裕と、病院の立地による家賃はどう影響する?

疲れた状態では家計を見直す気力が残りにくく、通勤を優先した住まい選びは家賃の負担を大きくします。この2つは別々に見えて、同じ家計の中でつながっています。

資産形成や家計管理は、落ち着いて数字と向き合う時間が必要です。不規則な勤務で疲れていると、通帳を開く気力が残らない日もあります。「NISAが気になるけど調べる余裕がない」「保険を見直したいけど面倒」と感じて先延ばしになるのは、金融の知識の問題というより、考える時間と体力が残らない働き方の問題です。

家賃は、毎月必ず出ていく固定費の中でも大きな項目です。夜勤明けの帰り道や通勤の負担を考えて、職場の近くに住みたくなるのは無理もありません。ただ、その選択が家賃を押し上げているなら、食費や日用品を節約しても効果は小さくなります。家賃は地域や間取りで大きく変わるので、見直す時は住まいの条件と通勤の負担を並べて考えるのが現実的です。

貯まらない先に、何が待っている?

貯金の目的は、将来の収入が下がる時期の不足を埋めることです。公的な数字を見ると、今の家計を整える意味がつかみやすくなります。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書(令和元年6月)は、高齢夫婦無職世帯の平均で毎月の不足額が約5万円となり、この状態が20年続くと約1,300万円、30年続くと約2,000万円の取崩しが必要になると示しています(報告書)。

年金の水準も確認しておきましょう。厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、老齢年金の平均年金月額(基礎年金月額を含む)は143,973円です(令和4年度末現在・概況)。総務省「家計調査年報」(2023年)では、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は1か月あたり145,430円でした(家計調査年報)。いずれも平均の数字で、あなたの将来の年金額や支出をそのまま示すものではありません。

制度の枠だけ紹介すると、金融庁の「新しいNISA」では、つみたて投資枠の年間投資枠が120万円、成長投資枠の年間投資枠が240万円です。投資には値下がりのリスクがあります。始めるか、いくらにするか、その前に生活費の備えを置くかは、収入と支出の状況を見て本人が決めることです。

この整理が当てはまらないのはどんな人?

5つの理由は、勤務の形と支出の関係を見るための整理です。次のような場合は、これだけでは説明がつきません。

  • 貯金が増えない主な原因が、奨学金や借入の返済、ご家族への仕送りなど、勤務と関係のない出費にある場合
  • 夜勤がなく、勤務が日勤中心で規則的な場合(割高な生活費と夜勤手当の2点は当てはまりにくくなります)
  • 家賃補助や寮など、住まいの負担が小さい職場に勤めている場合

この場合は、まず支出を固定費と変動費に分けて、どこに出費が集まっているかを見るところから始めてください。収入そのものを増やしたい場合は、働き方や職場を変える選択もありますが、今すぐ決める必要はありません。

よくある質問

Q. 看護師の貯金が増えにくいのはなぜですか?

不規則な勤務による割高な生活費、ストレス発散のための支出、夜勤手当込みの収入に合わせた生活水準、お金について考える余裕のなさ、病院の立地に引っ張られる家賃が重なっているためです。意志の弱さや収入の低さではなく、働き方の構造に原因があります。

Q. 看護師の年収は、日本の平均給与と比べてどうですか?

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の看護師(企業規模10人以上・男女計)は、月額36.59万円×12か月に年間賞与85.64万円を足して約525万円です。国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」の平均給与は478万円です。調査の対象や算出方法が異なるため、単純には比べられません。

Q. 夜勤手当は、貯金を考える時にどう扱えばいいですか?

固定費は、夜勤手当を除いた収入で組むと家計が揺れにくくなります。日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」では夜勤手当(1回あたり)の平均が二交代制で11,368円ですが、金額は病院ごとに違うので、自分の給与明細で確かめてください。

Q. 老後に備えて、いくら貯めておけばいいですか?

必要な額は、年金の受取額や暮らし方で変わるので、一律の金額は言えません。目安として、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書は、高齢夫婦無職世帯の平均で毎月の不足額約5万円が20年続くと約1,300万円の取崩しが必要と示しています。ご自身の場合は、年金の見込額と今の支出を並べて確かめてください。

Q. 新しいNISAは始めたほうがいいですか?

始めるべきとは言えません。金融庁の「新しいNISA」は、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円という制度です。投資には値下がりのリスクがあります。生活費の備えを先に確保し、始めるかどうかはその後で判断しても遅くありません。

Q. 家賃を下げるには、転職するしかありませんか?

そうとは限りません。住み替えで家賃を下げる、職場に家賃補助や寮があるか確かめる、という選択もあります。転職は選択肢の1つです。収入・家賃・通勤の負担を並べて比べてみてください。

まとめ:貯まらないのは、あなたのせいじゃない

貯金が増えにくいのは、意志や収入の問題ではなく、勤務の形が支出の形をつくっているためです。見直す順番の目安は、固定費を夜勤手当なしの収入で組めているか、家賃が収入に見合っているか、ご褒美の予算を家計の中に置けているか、の3点です。

借入の返済など勤務と関係のない事情が主な原因なら、この整理だけでは足りません。今の状況に合わせて、できるところから整えていきましょう。

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この記事の監修者
株式会社じょいなす 代表取締役 / 臨床工学技士
元臨床工学技士。病院勤務を経て、看護師の転職支援事業を立ち上げ。面談は代表自ら対応し、一人ひとりのキャリアに向き合っています。
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  • 有料職業紹介事業 許可番号:23-ユ-302980
  • 取り扱う職種:看護師
  • 求職者の費用負担:無料(紹介手数料は、採用が決まった医療機関・事業所が負担します)

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、特定の転職先や結果をお約束するものではありません。