夜勤を月8回こなしても、口座は思ったほど増えない。40代が見えてきて、ふと「このまま働き続けて、老後は本当に大丈夫なのか」と不安になる——。
看護師の平均年収は約508万円(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」)。全産業の平均より高い。それなのに貯蓄が増えにくいのは、収入が足りないからではなく「金額が見えていない」からだ。将来いくら必要で、今のペースでいくら貯まるのか。数字にしてしまえば、不安の正体はかなり小さくなる。
不安の正体は「金額が見えない」こと
漠然とした不安はたいてい、対象が見えていないときに大きくなる。「老後が心配」も同じで、必要額と準備額の両方がぼんやりしているから不安だけが膨らむ。
逆に言えば、必要額・年金・今の貯蓄ペースの3つを数字で並べた瞬間に、不安は「あと毎月いくら積めばいいか」という具体的な課題に変わる。ここから先は、その3つの数字を順番に見ていく。
老後にいくら必要?年金だけで足りる?
年金がいくらもらえるかから確認する。老齢厚生年金(基礎年金を含む)の平均受給額は月約14.4万円(厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。一方、高齢単身無職世帯の生活費は月約15.5万円(総務省「家計調査年報 2023年」)。
| 項目 | 月額(単身モデル) |
|---|---|
| 年金収入 | 約14.4万円 |
| 生活費の支出 | 約15.5万円 |
| 毎月の不足 | 約1.1万円 |
毎月1.1万円の不足なら、30年で約400万円(筆者試算)。これは持ち家あり・健康な前提のモデルケースで、賃貸の家賃や介護費用が乗れば不足額は何倍にもなる。2019年に話題になった「老後2,000万円問題」(金融庁 金融審議会報告書)も、夫婦無職世帯のモデルで計算された一例にすぎない。自分の条件で計算しないと、必要額は決まらない。
なぜ高収入でも貯まらないのか?
平均年収が高いのに貯まらない理由は、看護師特有の事情が大きい。
夜勤手当が収入を底上げしている。夜勤分は将来ずっと続く前提にできない。年齢とともに夜勤回数は減り、その分の手当も消える。手当に生活水準を合わせていると、夜勤を減らした瞬間に家計が赤字になる。
もう一つは、忙しさゆえの支出。不規則な勤務で自炊が難しく外食・コンビニが増える、ストレス発散の買い物が増える——。手取りの多さに比べて、自由に使えるお金が手元に残らない構造になりやすい。貯まらないのは意志の弱さではなく、働き方の副作用だ。
今から何をすればいい?3つの現実的な手
特別なことはいらない。順番に手をつければいい。
①夜勤手当を「貯蓄専用」にする。夜勤手当を生活費に組み込まず、入った分はそのまま貯蓄・投資に回す。将来夜勤を減らしても生活が崩れない家計に変えられる。
②固定費を下げる。家賃・通信・保険の見直しは、節約のなかで効果が長続きする。基礎支出が下がるほど、同じ収入でも自由に使えるお金が増える。
③つみたてで時間を味方につける。少額でも長く続けると差が出る。新しいNISA(金融庁)のつみたて枠を使った例が下表。
| 条件 | 20年後(筆者試算) |
|---|---|
| 月3万円・預金(利回り0%) | 720万円 |
| 月3万円・利回り3%で運用 | 約985万円 |
利回り3%は全世界株インデックスの長期平均を参考にした想定で、実際の運用成果を保証するものではない。それでも、同じ月3万円でも置き場所で約265万円の差が出る。早く始めるほどこの差は開く。
将来の資産はどう見える化する?
必要額・年金・つみたて——3つの数字は、頭の中で足し算してもピンとこない。グラフで「10年後・20年後にいくら残るか」が見えて初めて、不安は計画に変わる。
with Nursingのライフプランシミュレーターは、年齢・収入・貯蓄ペースを入れるだけで、将来の資産推移を無料でグラフ化できる。今の働き方のままだと将来どうなるか、夜勤を減らしたらどう変わるかを、数字で先に見ておける。
今の年収で手取りがいくらになるかは年収シミュレーターで確認できる。そのうえで「働き方そのものを見直したほうがいいかも」と思ったら、LINEのキャリア相談で一緒に整理できる。お金の不安は、一人で抱えるより数字にして話したほうが早く軽くなる。
よくある質問
Q. 看護師は老後資金をいくら貯めればいい?
必要額は住まい(持ち家か賃貸か)・家族構成・健康状態で大きく変わるため、一律の正解はない。単身・持ち家のモデルなら不足は30年で約400万円(筆者試算)だが、賃貸や介護費用が加わると数倍になる。自分の条件でシミュレーションして必要額を出すのが先決。
Q. 貯金がほとんどない。今からでも間に合う?
間に合う。重要なのは残り年数より「固定費を下げて毎月いくら積めるか」。月3万円を20年続ければ、運用次第で約985万円(筆者試算)。まず夜勤手当を貯蓄に回す仕組みづくりから始めるといい。
Q. NISAとiDeCo、看護師はどちらを優先すべき?
引き出しやすさを重視するなら新しいNISA、老後資金に絞って税制メリットを最大化するならiDeCoが基本。働き方やライフイベントによって最適解は変わるため、両制度の違いを押さえたうえで自分のプランに当てはめるのがいい。

