子育て中の看護師が「辞めずに続ける」ための職場選び

子育てしながら看護師を続けることは可能です。ただし、職場選びを間違えると続けにくくなります。

厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査」(平成22年度・少し古い調査です)では、看護職員として退職経験のある人の退職理由(主な理由3つまで)で「出産・育児のため」が22.1%で最も多くなっています。辞める理由は看護が嫌になったからとは限らず、物理的に続けにくい職場にいたからという場合もあります。

子どもが生まれると、働き方の優先順位が一変します。続けられるかどうかは、本人の頑張りより、職場の条件と子どもの年齢の組み合わせで決まる部分が大きくなります。

病棟ママナースが「限界」を感じる3つの場面とは?

急性期病棟で子育てしながら働くと、つまずきやすい場面は3パターンに整理できます。順に挙げます。

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1. 夕方の申し送り時間に帰れない。時短勤務でも、予定の時刻に帰れないことがあります。申し送りが夕方に始まる職場では、結局そこまで残ることになり、保育園のお迎えに間に合いません。

2. 夜勤免除が「気まずい」。制度上は夜勤免除を申請できても、人手不足の病棟で「夜勤できません」と言い続けるのは精神的にきついものです。周囲の視線が気になって、結局辞める人もいます。そもそも夜勤を何歳まで続けられるかについては「夜勤は何歳まで続けられる?」も参考になります。

3. 子どもの急な発熱で休めない。有給は取れても、当日の穴埋めで同僚に負担がかかります。「また休むの?」という空気に耐えられなくなる人もいます。

これらは個人の努力では解決できません。職場の構造の問題です。

子どもの年齢によって「最適な働き方」はどう変わる?

最適な働き方は、子どもの年齢で大きく変わります。0歳と小学3年生では、制約の中身がまったく違うためです。

子どもの年齢 主な制約 現実的な選択肢
0〜2歳 発熱による急な休みが出やすい。保育園の預かり時間に上限あり 時短勤務・パート・訪問看護(週3〜4日)
3〜5歳 体調は安定するが行事が多い。延長保育の利用頻度が増える 日勤常勤・クリニック・訪問看護
小学1〜3年 学童保育の預かり時間は自治体によって違う。長期休暇の対応が必要 日勤常勤フルタイム・土日休みの職場
小学4年〜 留守番が可能になる。制約が大幅に減る 常勤フルタイム復帰が視野に入る

よくある失敗は「いま0歳だから10年間ずっと時短」と決めてしまうことです。子どもの成長に合わせて、2〜3年ごとに働き方を見直すのが現実的でしょう。

特に小1の壁は見落とされやすいポイントです。保育園は遅い時間まで預かってくれたのに、学童保育は預かり時間が短いことがあります。しかも、学童の対象学年は自治体によって違います。「保育園のうちは大丈夫だった」のに、小学校入学で行き詰まる人もいます。

子育て中の看護師は職場のどんな条件を見るべき?

確認したい条件は、終業時間・急な休みへの対応・時短勤務の実績・夜勤の有無・通勤時間の5つです。「子育てしやすい職場」を探すときは、この5つを実態で確かめてください。

条件 確認すべきこと 注意点
終業時間 実態として何時に帰れるか 求人票の「17時まで」を鵜呑みにしない
急な休みへの対応 当日欠勤時のバックアップ体制 「理解がある」ではなく仕組みがあるか
時短勤務の実績 今いるスタッフで時短を使っている人数 「制度はあるけど使っている人がいない」は危険
夜勤の有無 完全日勤のみか、夜勤免除の可否 夜勤免除は「できる」と「歓迎される」は別
通勤時間 自宅から30分以内が目安 通勤が長いと保育園送迎が難しくなる

見学時に「お子さんがいるスタッフは何人いますか?」と聞くだけで、その実態がわかります。子育て中のスタッフが実際に働いているなら、制度が機能している可能性があります。いない場合は、その理由を考えたほうがよいでしょう。

子育てと相性がいい職場タイプは?

誰にでも合う所はありませんが、健診センター・クリニック(外来)・訪問看護は、夜勤が無いか少なく、子育て中の看護師が続けやすい職場タイプです。ここでは、終業の時刻が読みやすい順に並べます。どれにも引き換えがあるので、良い面と同じだけ見ておいてください。どれが合うか迷う場合は、3分でできる適職診断も使えます。

健診センターは、予約制で1日の流れが読みやすいのが利点です。その代わり、給与は病棟よりかなり低めになりやすく、扱う業務が健診に限られるのでキャリアの幅も狭くなりがちです。土日の勤務の有無は施設ごとに違います。

クリニック(外来)は、午前診・午後診の時間が決まっているため予定が立てやすくなります。ただし土曜診療が多く、患者が多い日は残業になるクリニックもあります。少人数の職場なので、人間関係が合うかどうかで働きやすさが大きく変わります。「定時で帰れる」と思い込んで転職すると後悔するので、面接で残業の実態を聞いてください。

訪問看護は、日勤が中心で、直行直帰できる事業所もあります。一方で、訪問先で利用者の状態が急に変わったときは、自分一人で最初の判断と対応をします。夜間のオンコールがある事業所では、自宅で待機し、緊急時に対応する形で、手当が付きます。月に何回呼ばれるかはステーションで大きく違うので、子どもを寝かせている時間に呼ばれる可能性も含めて、面接で直近の実績を聞いてください。一人で訪問するため、臨床経験の年数が応募条件になっている事業所もあります。

働き方を変えると、年収はどのくらい下がる?

子育てに合わせて働き方を変えると、年収が下がることがあります。

夜勤をなくすと、夜勤手当の分は減ります。二交代制の夜勤手当(1回あたり)の平均は11,368円(日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」・定額の夜勤手当を支給する病院)です。月4回なら、年間で約55万円(11,368円×4回×12か月の算式値)になります。このほか、勤務日数や時間が減るパートでは、働いた分だけ収入が変わります。

年収が下がることを「損」と捉えるか、「子どもとの時間を買った」と捉えるかは人それぞれです。ただし大事なのは、年収が下がる「期間」を想定しておくことです。

たとえば子どもが0歳〜小学3年(9歳)の間だけ年収を100万円落とすと、9年間で計900万円の減収になります。一方、この期間に辞めてブランクが3年空くと、復職後の年収が下がるだけでなく、退職金の算定基礎も短くなります。「辞めずに年収を落とす」ほうが、「辞めて復帰する」よりトータルでは得をするケースもあります。

育休明けの転職は、いつがいい?

転職のタイミングは、育休明けに今の職場へ復帰し、時短の実績を作ってからがおすすめです。育休中に「今の職場に戻りたくない」と感じても、動く時期を間違えると選択肢が狭まります。

育休中の転職はおすすめしません。理由は、厚生労働省の資料によると、育児・介護休業法では、労使協定があれば、継続雇用1年未満の労働者を短時間勤務制度の対象外にできるとされているためです。育休明けに転職すると、転職先で時短が使えない可能性があります。

現実的なプランは次のとおりです。

  1. 育休明け → 今の職場に復帰(時短制度を使う)
  2. 復帰後1年以上勤務 → 時短実績を作る
  3. 子どもが2〜3歳になったタイミングで転職活動開始
  4. 転職先でも時短が使えるか確認してから決める

「辞めてから探す」のが、一番選択肢を狭めます。在職中に情報収集を始めるのが基本です。

パートナーとの役割分担は、転職の前に決めておくべき?

転職がうまくいくかどうかは、「家庭内の役割分担」にも大きく左右されます。見落とされがちなポイントです。

「転職したい」と考えるとき、確かめておきたいのは「パートナーは家事・育児をどのくらい分担しているか」です。

保育園の送りはどちらがやるのか、子どもが発熱したときはどちらが迎えに行くのかを確認します。これが「毎回自分」だと、どこに転職しても結局同じ壁にぶつかります。

転職活動を始める前に、パートナーとの役割分担を見直しましょう。地味な作業ですが、ここを飛ばすと同じことを繰り返してしまいます。

「辞める」前に「職場を変える」ことは検討できる?

辞める前に職場を変えることは、十分に検討できます。冒頭の調査のとおり、辞める理由の最上位は出産・育児です。条件の合う職場に移れば、続けられる場合があります。

一度辞めてブランクが空くと、復職のハードルは上がります。ブランクが長くなると、採用側が「技術が鈍っているのでは」と考えることもあります。復職時の年収が、辞める前より下がることもあります。

時短で働ける所に移りながら看護師を続け、子どもの成長に合わせて段階的にフルタイムに戻していきます。この「辞めずにスライドする」やり方なら、5年後・10年後の選択肢を残せます。

看護師の資格は一生使えます。子育て期間は長い人生の中の一時期です。その一時期のために資格を手放す必要はありません。

ただ、子どもの年齢の表は家庭の条件で前後します。実家が近くて送迎や病児の対応を頼める人は、上の表より早くフルタイムに戻れることがあります。逆に、ひとり親で頼れる人がいない場合や、子どもに持病や障害があって通院が多い場合は、表の年齢より長く制約が続きます。自分の家庭に置き換えて読んでください。

よくある質問

Q. 子育て中の看護師に向いている職場は?

健診センター・クリニック(外来)・訪問看護は、日勤が中心で予定を立てやすい職場タイプです。そのぶん、健診センターは給与が低め、クリニックは土曜診療や残業、訪問看護は一人での急変対応とオンコールという引き換えがあります。

Q. 育休中に転職活動をしてもいいですか?

情報収集はかまいませんが、育休明けすぐの転職には注意が要ります。育児・介護休業法では、労使協定があれば、継続して雇われた期間が1年未満の人を短時間勤務の対象から外せるため、転職先で時短が使えないことがあります。応募前に、入職1年目から時短が使えるかを確かめてください。

Q. 夜勤をやめると、収入はどのくらい減りますか?

二交代制の夜勤手当は1回平均11,368円(日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」)です。月4回の夜勤をやめると、年間で約55万円(算式値)減ります。勤務先の手当の額は給与明細で確かめてください。

Q. 小1の壁とは何ですか?

子どもが小学校に入ると、学童保育の預かり時間が保育園より短くなることがあり、仕事との両立が難しくなることを指します。学童の預かり時間と対象学年は自治体によって違うので、入学の1年前には確かめておくと準備できます。

Q. 一度辞めると、復職は難しいですか?

復職はできますが、ブランクが長いほど採用側の確認は増え、年収が辞める前より下がることもあります。辞めずに働き方を変えて続けるほうが、選択肢を残しやすくなります。

with Nursing のLINE相談では、お子さんの年齢や今の働き方に合わせて、時短や日勤のみといった働き方と収入の変わり方を一緒に整理できます。無理に転職を勧めることはなく、今の職場で続ける選択肢も含めて考えられます。

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この記事の監修者
株式会社じょいなす 代表取締役 / 臨床工学技士
元臨床工学技士。病院勤務を経て、看護師の転職支援事業を立ち上げ。面談は代表自ら対応し、一人ひとりのキャリアに向き合っています。
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  • 取り扱う職種:看護師
  • 求職者の費用負担:無料(紹介手数料は、採用が決まった医療機関・事業所が負担します)

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、特定の転職先や結果をお約束するものではありません。