子育て中の看護師が「辞めずに続ける」ための職場選び

子どもが生まれると、働き方の優先順位が一変する。

面談で「子育てしながら看護師を続けられますか」と聞かれることは多い。答えは「続けられる。ただし職場選びを間違えると詰む」だ。

厚生労働省の「看護職員就業状態等実態調査」によれば、看護師の離職理由の上位に「出産・育児」が入っている。辞める理由は看護が嫌になったからではなく、**物理的に続けられない職場にいたから**だ。

目次

病棟ママナースが「限界」を感じる3つの場面

急性期病棟で子育てしながら働くと、どこで詰まるか。面談で聞いた声をまとめると、だいたい3パターンに集約される。

**1. 夕方の申し送り時間に帰れない**。時短勤務でも16時に帰れることはほぼない。申し送りが16時半〜17時に始まるため、結局そこまで残ることになる。保育園のお迎えに間に合わない。

**2. 夜勤免除が「気まずい」**。制度上は夜勤免除を申請できても、人手不足の病棟で「夜勤できません」と言い続けるのは精神的にきつい。周囲の視線が気になって、結局辞める人がいる。そもそも夜勤を何歳まで続けられるかについては「夜勤は何歳まで続けられる?」も参考になる。

**3. 子どもの急な発熱で休めない**。有給は取れても、当日の穴埋めで同僚に負担がかかる。「また休むの?」という空気に耐えられなくなる。

これらは個人の努力では解決できない。職場の構造の問題だ。

子どもの年齢で「最適な働き方」は変わる

子育て中の働き方を考えるとき、「子どもが何歳か」で戦略は大きく変わる。0歳と小学3年生では、制約の中身がまったく違う。

子どもの年齢 主な制約 現実的な選択肢
0〜2歳 発熱による急な休みが月2〜3回。保育園の預かり時間に上限あり 時短勤務・パート・訪問看護(週3〜4日)
3〜5歳 体調は安定するが行事が多い。延長保育の利用頻度が増える 日勤常勤・クリニック・訪問看護
小学1〜3年 学童保育は18時まで。長期休暇の対応が必要 日勤常勤フルタイム・土日休みの職場
小学4年〜 留守番が可能になる。制約が大幅に減る 常勤フルタイム復帰が視野に入る

よくある失敗は「いま0歳だから10年間ずっと時短」と決めてしまうこと。子どもの成長に合わせて、2〜3年ごとに働き方を見直すのが現実的だ。

特に**小1の壁**は見落とされやすい。保育園は19時まで預かってくれたのに、学童保育は18時まで。しかも小学3年で学童を卒業する自治体もある。「保育園のうちは大丈夫だった」のに小学校入学で詰む人がいる。

子育て中の看護師が選ぶべき職場の条件

転職相談で「子育てしやすい職場」を探す看護師に、確認してもらう条件は5つある。

条件 確認すべきこと 注意点
終業時間 実態として何時に帰れるか 求人票の「17時まで」を鵜呑みにしない
急な休みへの対応 当日欠勤時のバックアップ体制 「理解がある」ではなく仕組みがあるか
時短勤務の実績 今いるスタッフで時短を使っている人数 「制度はあるけど使っている人がいない」は危険
夜勤の有無 完全日勤のみか、夜勤免除の可否 夜勤免除は「できる」と「歓迎される」は別
通勤時間 自宅から30分以内が目安 通勤1時間は保育園送迎で破綻する

見学時に「お子さんがいるスタッフは何人いますか?」と聞くだけで、その職場のリアルがわかる。ママナースが3人以上いる職場は、制度が実際に機能している可能性が高い。ゼロなら、理由を考えたほうがいい。

子育てと相性がいい職場タイプ

すべての人に合う職場はないが、子育て中の看護師が比較的続けやすい職場タイプはある。

**訪問看護**は、日勤のみ・直行直帰OKの事業所もあり、スケジュールの自由度が高い。夜間オンコールは病棟の夜勤とは異なり、自宅待機しながら緊急時に対応する形で、対応が発生しない夜も多く、手当も支給される。ただし一人で訪問するため、臨床経験3年以上が目安だ。

**クリニック(外来)**は、午前診・午後診の時間が決まっているため予定が立てやすい。ただし土曜診療が多く、残業が発生するクリニックもある。「定時で帰れる」と思い込んで転職すると後悔する。面接で残業の実態を必ず確認すること。

**健診センター**は、完全予約制で残業がほぼない。土日休みのところも多い。ただし給与は病棟より年収100万円以上下がるケースもある。スキルの幅も狭くなるため、長期的なキャリアを考えると慎重な判断が必要だ。

年収はどのくらい下がるのか

子育てに合わせて働き方を変えると、年収は下がる。これは避けられない現実だ。

働き方 年収目安 病棟常勤との差
病棟常勤(夜勤月8回) 480〜530万円
訪問看護(日勤・オンコールあり) 420〜480万円 ▲50〜60万円
クリニック外来 350〜420万円 ▲100〜130万円
健診センター 300〜380万円 ▲130〜180万円
パート(週3〜4日) 200〜300万円 ▲200〜280万円

※ 筆者試算。地域・施設規模で差あり。

年収が下がることを「損」と捉えるか、「子どもとの時間を買った」と捉えるかは人による。ただし大事なのは、**年収が下がる「期間」を想定しておくこと**だ。

たとえば子どもが0歳〜小学3年(9歳)の間だけ年収を100万円落とすと、9年間で計900万円の減収になる。一方、この期間に辞めてブランクが3年空くと、復職後の年収が下がるだけでなく、退職金の算定基礎も短くなる。**「辞めずに年収を落とす」ほうが、「辞めて復帰する」よりトータルでは得をする**ケースが多い。

育休明けの転職、タイミングはいつがベストか

育休中に「今の職場に戻りたくない」と感じる人は少なくない。でもタイミングを間違えると選択肢が狭まる。

**育休中の転職はおすすめしない**。理由は、育児時短勤務制度を使うには「同じ職場に1年以上在籍していること」を条件にしているところが多いからだ。育休明けに転職すると、転職先で時短が使えない可能性がある。

現実的なプランはこうだ。

  1. **育休明け → 今の職場に復帰**(時短制度を使う)
  2. **復帰後1年以上勤務** → 時短実績を作る
  3. **子どもが2〜3歳になったタイミングで転職活動開始**
  4. **転職先でも時短が使えるか確認してから決める**

「辞めてから探す」は一番選択肢を狭める。在職中に情報収集を始めるのが鉄則だ。

パートナーとの役割分担も転職の成否を左右する

見落とされがちだが、転職がうまくいくかどうかは「家庭内の役割分担」にも大きく左右される。

面談で「訪問看護に転職したい」と話す看護師に、必ず聞くのは「パートナーは家事・育児をどのくらい分担していますか」だ。

保育園の送りはどちらがやるのか。子どもが発熱したとき、どちらが迎えに行くのか。これが「毎回自分」だと、どんな職場に転職しても結局同じ壁にぶつかる。

転職活動を始める前に、パートナーとの役割分担を見直す。地味だが、ここをスキップすると同じことを繰り返す。

「辞める」前に「職場を変える」を検討する

子育てで看護師を辞める人の中には、「辞めなくても職場を変えれば続けられた」人が少なくない。

一度辞めてブランクが空くと、復職のハードルは上がる。3年以上のブランクがあると、採用側は「技術が鈍っているのでは」と判断する。復職時の年収も、辞める前より下がることが多い。

時短で働ける職場に移りながら看護師を続ける。子どもの成長に合わせて段階的にフルタイムに戻す。この「辞めずにスライドする」戦略が、5年後・10年後の自分を一番楽にする。

看護師の資格は一生使える。子育て期間は長い人生の中の一時期だ。その一時期のために資格を手放す必要はない。

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この記事の監修者
株式会社じょいなす 代表取締役 / 臨床工学技士
元臨床工 学技士。病院勤務を経て、看護師の転職支援事業を立ち上げ。年間300人以上の面談を 代表自ら対応し、一人ひとりのキャリアに向き合っています。
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