精神科訪問看護は、精神疾患のある人の自宅を訪ね、服薬の確認、睡眠や食事などの生活リズムの支え、話を聴くことを通して、地域での暮らしを続けられるよう支える仕事です。医療処置より対話が中心で、訪問は原則一人で行います。利用する人は増えていて、国立精神・神経医療研究センター「精神保健福祉資料(630調査)」では、精神科訪問看護の利用者の実人数(各年6月中)が2020年の156,312人から2024年の249,398人へ増えました。4年で約1.6倍です。
この記事でわかること
- 病棟の精神科と、精神科訪問看護の仕事の違い
- 給与の考え方と、移った時に年収が変わる所
- 負担の中身と、転職の前に確かめること
精神科訪問看護の仕事は、病棟の精神科と何が違う?
病棟は治療のために整えられた環境で、精神科訪問看護は本人の生活の場です。病棟では症状の安定を見る場面が多く、訪問では、本人が自分の家でどう暮らしているかを見る場面が多くなります。
| 項目 | 病棟の精神科 | 精神科訪問看護 |
|---|---|---|
| 場所 | 病院の病棟(閉鎖病棟・開放病棟) | 利用者の自宅 |
| 主な仕事 | 服薬の管理・行動制限の対応・急性期の看護 | 服薬の確認・生活リズムの支え・傾聴 |
| 体制 | 複数の職員で病棟の患者を担当 | 一人で訪問し、1件ずつ対応 |
| 関わり方 | 勤務の中で短い時間ずつ関わる | 決まった時間、1対1で関わる |
訪問先では、薬を飲めているか、眠れているか、食事がとれているか、表情や話し方に変化がないかを見ます。部屋の片づき方や郵便物のたまり方から、調子の変化に気づくこともあります。家族と暮らしている人なら、家族の困りごとを聞くのも仕事の一部です。
病院の側を見ると、厚生労働省「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」では、精神病床は316,147床で病院の病床全体の21.5%です(令和6年10月1日現在・前年より2,774床減)。病床が減る一方で、地域で暮らす人を訪問で支える仕事は増えています。
精神科訪問看護の給与は、ほかの訪問看護より高い?
一律には言えません。賃金構造基本統計調査には、精神科訪問看護だけの給与の区分がありません。給与は事業所ごとに決まり、精神科を中心にしているかどうかで決まるわけではありません。
病棟から移る時に年収が変わるのは、主に夜勤手当です。日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」では、二交代制の夜勤手当は1回あたり平均11,368円でした。月4回の夜勤をやめると、この平均で年に約55万円(11,368円×4回×12か月の算式値)が無くなります。その代わりに、オンコールの当番や訪問の件数に応じた手当を付ける事業所があります。手当の有無と額は求人票と面接で確かめ、自分の条件での試算は適職診断(無料・約3分)で出せます。
精神科訪問看護の負担は?
訪問看護に共通する負担と、精神科ならではの負担の両方があります。
訪問看護に共通する負担
訪問は原則一人なので、急変時の初動は自分で判断します。困った時はステーションに電話で相談できますが、その場で最初に動くのは自分です。夜間のオンコールがある事業所では、自宅で待機し、緊急時に対応する形で、手当が付きます。病棟の夜勤とは違います。月の呼び出しの回数は事業所で大きく違うので、面接で実績を聞きます。
精神科ならではの負担
- 関係をつくるのに時間がかかる:訪問を断られたり、玄関で帰されたりすることがあります。何回も通って、少しずつ信頼を得ていく仕事です。
- 暴言や暴力に向き合う場面がある:症状が不安定な時期には、言葉が強くなる人もいます。事業所がどんな対策を取っているかで、負担の大きさが変わります。
- 変化が見えにくい:病気と付き合いながら暮らしを続けることが目標になる人も多く、良くなったと実感できるまでに時間がかかります。
その一方で、入院を繰り返していた人が、家での暮らしを続けられるようになる過程に、長く関われる仕事でもあります。
精神科訪問看護に向いているのは、どんな人?
処置の数より対話を大事にでき、答えの出ない状況に焦らず、一人で動くことに抵抗が少ない人です。
- 対話を大事にしたい人:決まった医療行為を順に行う仕事ではありません。同じ話を何度も聴き、その中の小さな変化に気づくことが仕事の中心になります。
- すぐに結果を求めない人:「治す」より「付き合い続ける」ことを支える場面が多い仕事です。
- 一人で判断する場面に耐えられる人:訪問先で最初に判断するのは自分です。
反対に、いつも誰かと一緒に働いていたい人や、成果をすぐに実感したい人には、合いにくいことがあります。
精神科訪問看護に転職するには、どんな経験が要る?
精神科の病棟経験を必須にしない事業所もあります。求められることが多いのは、次の3つです。
- 臨床経験:何年以上かは事業所で違います。
- 精神科訪問看護の要件を満たす経験か研修:精神科訪問看護を行うには、精神科での実務経験や、精神科訪問看護に関する研修の修了などの要件があります。入職後に研修を受けて満たす形の事業所もあるので、面接で確かめます。
- 普通自動車の運転免許:車で訪問する地域では求められます。
精神科の経験がない場合は、入職後の研修と、一人で訪問するまでの同行の期間を、面接で具体的に聞いてください。教育の体制が整っていない事業所に入ると、十分な準備がないまま一人で訪問することになりかねません。
よくある質問
Q. 精神科の経験がなくても、精神科訪問看護で働ける?
働ける事業所はあります。ただし精神科訪問看護には、精神科での実務経験や研修の修了などの要件があるので、入職後に何を受けて要件を満たすのかを確かめます。最初は先輩と一緒に訪問する同行の期間があるかも聞いておきます。
Q. 1回の訪問では、何をする?
体調と服薬の確認、睡眠や食事の様子の聞き取り、困っていることの相談が中心です。必要に応じて、主治医や相談支援の担当者に様子を伝えます。家族がいる場合は、家族の相談にも応じます。
Q. 暴言や暴力が心配な時は、何を確かめればいい?
事業所の対策です。訪問の前に利用者の情報をどこまで共有しているか、二人で訪問する体制があるか、危ないと感じた時にその場を離れてよい決まりがあるかを、面接で聞きます。
Q. 病棟から移ると、年収は下がる?
夜勤手当の分は下がりやすくなります。二交代制の夜勤手当は1回あたり平均11,368円です(日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」)。月4回なら、この平均で年に約55万円(算式値)です。オンコールや訪問件数の手当で一部が戻る事業所もあるので、内訳で比べます。
Q. 精神科訪問看護だけを行うステーションと、ほかの訪問と一緒に行うステーションがある?
あります。精神科の利用者を中心に訪問する事業所もあれば、高齢者やがんの人などへの訪問と合わせて行う事業所もあります。精神科の訪問がどのくらいの割合かは、求人票と面接で確かめます。
with Nursingでは、今の評価や給与、働き方の整理から一緒に考えます。応募する求人が決まったら、面接の準備や書類の見直し、条件の相談も一緒に進めます。無理に転職を勧めることはありません。
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