「訪問看護はきつい」は本当か——現場3年目が語るリアル

初めての一人訪問で、利用者さんが突然SpO2 85%まで下がった。電話の向こうの管理者に状況を伝えながら、酸素流量を上げて、主治医への連絡を同時に進める。手が震えた。

訪問看護に転職して3年。「きつい」と感じた場面は確かにある。ただ、病棟時代の「きつさ」とは質がまったく違う。

目次

訪問看護が「きつい」と言われる3つの理由

訪問看護の大変さは、大きく3つに集約される。

1. 訪問中は一人で判断しなければならない。 病棟なら隣にいる先輩に「ちょっと見てください」と声をかけられる。訪問先にはその先輩がいない。急変時、最初のアセスメントと初動は自分一人の責任になる。経験3年目の今でも、判断に迷う場面はゼロではない。

2. 夜間オンコールがある。 夜間オンコールは病棟の夜勤とは異なる。自宅待機しながら緊急時に対応する形で、対応が発生しない夜も多く、手当も支給される。とはいえ、電話が鳴るかもしれないという緊張感は、慣れるまで数ヶ月かかった。当番は月4〜8回程度のステーションが多い。

3. 移動の負担。雨の日も猛暑日も、自転車や車で利用者宅を回る。1日4〜6件の訪問で、移動時間は合計1〜2時間になることもある。夏場の車内、冬場の自転車移動は体力を使う。

病棟の「きつさ」とは何が違うのか

病棟勤務がきつい理由は、ナースコールの連続、夜勤明けの疲労、人間関係の密度——同時多発的にストレスが押し寄せる点にある。月8回の夜勤で生活リズムが崩れ、慢性的な睡眠不足を抱えている看護師は少なくない。

訪問看護のきつさは「一人で背負う重さ」だ。逆に言えば、ナースコールに追われることはないし、休憩は自分のタイミングで取れる。勤務は日勤が基本で、生活リズムを維持しやすい。

きつさの「量」は病棟のほうが大きいと感じる。訪問看護のきつさは「質」——判断の重さに集中している。

3年目で感じる「きつさ」の変化

1年目は毎日が怖かった。利用者の状態が少し変わるだけで「これ、大丈夫かな」と不安になり、ステーションに戻ってから管理者に確認する日々だった。

2年目になると、パターンが見えてくる。「この利用者さんは午後に血圧が下がりやすい」「この疾患ならこの症状に注意」と、経験の引き出しが増えた。オンコール対応も、電話の内容だけで緊急度を判断できるようになった。

3年目の今、きつさの中身が変わっている。技術的な不安は減り、代わりに「この利用者さんにとって最善のケアは何か」という、もっと深いレベルの問いと向き合うようになった。終末期の利用者さんとご家族に寄り添う場面では、感情的な負荷は大きい。でも、その重さは「やりがい」と表裏一体だ。

それでも訪問看護を選ぶ理由

きつい面を正直に書いた。それでも自分が訪問看護を続けている理由は明確にある。

一人ひとりの利用者さんに時間をかけてケアできる。病棟で7人の受け持ちを同時にこなしていたときには不可能だったことだ。30分〜1時間、その人だけに向き合う。名前を呼んで、表情を見て、生活の場でケアする。看護の原点に近い。

給与面も、訪問看護は看護師の中では比較的高い水準にある。厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、訪問看護師の平均年収は約508万円。病棟勤務と比べて大きく下がるわけではなく、オンコール手当や訪問件数に応じたインセンティブが加算されるステーションもある。

ワークライフバランスの面では、日勤ベースの勤務体系が大きい。夜勤がないだけで、睡眠の質も食事のリズムも変わる。子育て中のスタッフが多いステーションでは、シフトの融通が利きやすい環境も珍しくない。

向いている人・向いていない人

訪問看護に向いているのは、一人で判断することに抵抗がない人——ではなく、不安を感じながらも「調べて、相談して、対処する」プロセスを回せる人だ。最初から一人で何でもできる必要はない。

逆に、常にチームで動いていたい人、判断を委ねたい人には合わない。これは能力の問題ではなく、働き方の好みの問題だ。

臨床経験は最低3年あったほうがいい。内科・外科の基本的なアセスメントができること、急変時の初動ができることが前提になる。ただし、教育体制が整ったステーションなら2年目からでも受け入れているところはある。

まとめ——「きつい」の中身を知ってから決めてほしい

訪問看護はきつい。それは事実だ。ただ、そのきつさは病棟のように「量で押しつぶされる」タイプではなく、「一人の判断の重さ」に由来するものだ。

そして、その重さは経験とともに変化する。1年目の恐怖は、3年目には「もっと良いケアを」という探求に変わっている。

不安があるなら、一度話してみてほしい。あなたの経験年数や希望条件をもとに、訪問看護が合うかどうかを一緒に考えられる。

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この記事の監修者
株式会社じょいなす 代表取締役 / 臨床工学技士
元臨床工 学技士。病院勤務を経て、看護師の転職支援事業を立ち上げ。年間300人以上の面談を 代表自ら対応し、一人ひとりのキャリアに向き合っています。
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この記事を書いた人

元臨床工学技士。病院勤務を経て、看護師の転職支援事業を立ち上げ。年間300人以上の面談を代表自ら対応し、一人ひとりのキャリアに向き合っています。

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