認定看護師・専門看護師の取得にかかった費用を、手当だけで取り戻すのは難しいのが実情です。日本看護協会「2022年 病院看護・助産実態調査」では、認定看護師(非管理職)に毎月の手当を払う病院は、認定看護師がいる病院の44.4%でした。手当の月額は平均10,335円です。年に直すと10,335円×12か月で124,020円になります(計算例)。目指すかどうかは手当の額ではなく、資格が無いと任されない仕事をしたいかどうかで決めます。
この記事でわかること
- 認定看護師と専門看護師の要件と役割の違い
- 取得にかかる費用の見積もり方と、手当で取り戻すのにかかる年数の出し方
- 資格を取らずに専門性を伸ばす道と、迷った時の決め方
認定看護師と専門看護師は、何が違う?
どちらも日本看護協会が認定する資格です。認定看護師は特定の分野で実践し、周りの看護師を指導します。専門看護師は大学院で学び、実践に加えて、関係者の調整や倫理的な問題の調整、研究まで担います。
| 項目 | 認定看護師 | 専門看護師 |
|---|---|---|
| 実務経験 | 通算5年以上(うち3年以上は認定看護分野) | 通算5年以上(うち3年以上は専門看護分野) |
| 学ぶ場所 | 認定看護師教育課程 | 看護系大学院の修士課程 |
| 分野の数 | 19分野 | 14分野 |
| 主な役割 | 実践・指導・相談 | 実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究 |
要件と分野は、日本看護協会の資格のページにある内容です(専門看護師の分野数は14、認定看護師は今の教育課程に移った後で19)。受験を考える時は、最新の要件を日本看護協会のページで確かめます。
今の認定看護師の教育課程には特定行為研修が組み込まれていて、修了すると手順書に沿って特定行為を行えるようになります。資格を取ってからの仕事の幅は、以前の課程で取った人と同じではありません。
取るまでにかかる費用は、どう見積もる?
費用は、学費、学んでいる間に減る収入、通学にかかる費用の3つを足して出します。中でも大きくなりやすいのは、学費より収入の減り方です。
- 学費:教育機関ごとに違います。募集要項の入学金・授業料・実習費を足します
- 減る収入:休職・退職・働きながら通うのどれにするかで変わります。「今の月給×通う月数」から、休職中に支給される額を引いて出します。夜勤をやめる場合は、夜勤手当の分も減ります
- 通学の費用:交通費、教材費、遠方の場合は住まいの費用です
専門看護師は大学院の修士課程を修了する必要があるので、学ぶ期間は認定看護師より長くなりやすく、その分、減る収入も大きくなります。
病院によっては、学費の補助や、通学中を出張扱いにする制度があります。補助を受けた場合は、修了後に一定期間働く約束が付くことがあります。転職を考えているなら、その期間と、途中で辞めた時に返す額を先に確かめます。
手当で費用を取り戻すには、何年かかる?
「費用の合計÷手当の年額」で年数が出ます。上の調査の平均で年額を出すと、次のとおりです。
| 資格(非管理職) | 月額の平均 | 年額(計算例) |
|---|---|---|
| 認定看護師 | 10,335円 | 10,335円×12か月=124,020円 |
| 専門看護師 | 12,229円 | 12,229円×12か月=146,748円 |
平均の手当を10年受け取っても、124,020円×10年で約124万円です。学費と減った収入の合計がこれを超えるなら、手当だけでは取り戻せません。
そもそも、毎月の手当がある病院は認定看護師がいる病院の半分に届いていません。今の病院に手当があるか、いくらか、いつから付くかは、就業規則か看護部で確かめます。転職先を探す時も、求人票に資格手当の欄があるかを見ます。
手当の他に、資格が昇格の条件になっている病院や、専任の役割に就くと役職の手当が付く病院もあります。手当の額だけでなく、資格を取った後の給与の上がり方を聞いておくと、年数の見積もりが変わります。
資格を取ると、仕事はどう変わる?
変わるのは、受け持ちの患者を超えて動く時間が増えることです。認定看護師は病棟の外で相談を受けたり、院内の研修で教えたりします。専門看護師は、難しい事例で医師や他の職種との調整を任されます。
ただ、その活動の時間をどれだけ取れるかは病院で違います。資格を取っても、病棟の勤務がこれまでと同じで、活動は勤務の外になる例もあります。院内で活動している認定看護師に、実際の1週間の過ごし方を聞いてみると、取った後の働き方が具体的に見えます。
転職の場面では、資格を持っていることが応募の条件になる役割があります。緩和ケアや感染管理など、病院が専任の担当を置く分野です。そうした役割に就きたいなら、資格は入口になります。
資格を取らずに専門性を伸ばす道はある?
あります。費用と期間を抑えて実践の幅を広げるなら特定行為研修、分野を変えて経験を広げるなら転職、組織を動かす側に回るなら管理職です。
特定行為研修:実践の幅を区分ごとに広げる
特定行為研修は、手順書に沿って特定行為を行うための研修です。厚生労働省の資料では、特定行為は38あり、21の区分に分かれています。研修は、全員が受ける共通科目が250時間、区分ごとの科目が5〜34時間です(特定行為研修の省令)。修了者は令和7年3月現在で11,840人です。必要な区分だけを選べるので、認定看護師の課程より短い期間で受けられます。
分野を変える:違う現場で経験を広げる
急性期から回復期、病棟から在宅へと移ると、同じ看護師の経験でも求められる力が変わります。どの現場にも引き受けることがあります。訪問看護は利用者の家に一人で訪問するので、急変の初動を一人で担い、夜間のオンコールがあります。老健・特養は、夜間に看護師が一人で判断する場面があります。移る前に、その現場の体制を見学や面接で確かめます。
管理職:組織を動かす側に回る
主任や師長になるのに、認定看護師・専門看護師の資格は必須ではありません。見られるのは、リーダーの経験や病棟での実績です。人を育てることや、仕組みを直すことにやりがいを感じるなら、こちらの道もあります。
取るか迷った時は、何で決める?
次の3つの問いに、答えを書き出してみます。
- その分野で、資格が無いと任されない仕事があるか:あるなら、資格は費用をかける理由になります。無いなら、経験を積むだけで同じ仕事に就ける可能性があります
- 費用の合計を、家計で受け止められるか:学費と減る収入を足した額を、手当の年額で割った年数を出します。取り戻せない分を、自分への投資として受け止められるかを決めます
- 取った後に働きたい場所が、決まっているか:今の病院で活動するのか、資格を活かせる職場に移るのか。移るなら、資格手当と専任の役割がある職場を先に調べます
私たち with Nursing の LINE 相談では、今の経験と、資格を取った後に目指したい働き方の整理をお手伝いしています。資格を活かせる職場の条件を確かめることもできます。無理に転職を勧めることはありません。
よくある質問
Q. 認定看護師の資格手当は、いくらくらい?
日本看護協会「2022年 病院看護・助産実態調査」では、毎月の手当がある病院の平均で月10,335円でした。手当が無い病院もあるので、就業規則か看護部で確かめます。
Q. 認定看護師と専門看護師、どちらを目指せばいい?
現場で実践し、周りを指導したいなら認定看護師です。大学院で学び、難しい事例の調整や研究まで担いたいなら専門看護師です。どちらも実務経験が通算5年以上必要です。
Q. 働きながら資格を取ることはできる?
教育機関によっては、働きながら通える形の課程があります。勤務を減らす場合は、その分の収入の減り方と、病院の支援制度を先に確かめます。
Q. 特定行為研修と認定看護師は、どう違う?
特定行為研修は、特定行為を行うための研修で、必要な区分だけを選んで受けられます。認定看護師は、分野の実践・指導・相談まで担う資格で、今の教育課程には特定行為研修が組み込まれています。
Q. 資格があると、転職で有利になる?
資格を応募の条件にしている役割では有利です。そうでない求人では、資格より、これまでの経験と、応募先でどう活かすかが見られます。資格手当があるかも求人票で確かめます。

