ブランクがあっても、看護師として復職できます。厚生労働省の看護職員就業状況等実態調査(平成22年度)では、退職経験のある看護職員の退職理由で「出産・育児のため」が22.1%と最も多くなっています。少し前の調査ですが、育児などで一度現場を離れ、また戻ってくる看護師は珍しくありません。
「もう一度働きたい。でも、ブランクがあるから踏み出せない」。そう感じるのは自然なことです。薬剤や医療機器は変わり、体力も以前と同じとは限りません。ただ、不安の中身を分けてみると、それぞれに打てる手があります。この記事では、復職前の準備、戻る職場の選び方、時短で戻る時に確かめたい制度を順に整理します。
復職への不安は、何に分けて考えればいい?
ブランク明けの不安は、知識・技術、体力・生活リズム、人間関係の3つに分けると整理しやすくなります。
知識・技術の不安は、「浦島太郎になっていないか」という心配です。薬剤やガイドラインの改訂、電子カルテの操作、採血やルート確保といった手技の感覚。どれも、研修と入職後の指導で取り戻せる種類の不安です。
体力・生活リズムの不安は、もう少し家庭の事情に左右されます。子どもの送迎や家事の時間を抜くと、夜勤はもちろん、日勤のフルタイムでも続くか自信が持てない人がいます。こちらは、勤務の形を選ぶことで小さくできます。
人間関係の不安は、新しい職場に馴染めるか、年下の先輩に教わる立場をどう受け止めるか、という心配です。前の職場とは仕事の進め方が違うこともあります。入職前の見学で、雰囲気や教える人の顔ぶれを見ておくと、想像だけで膨らむ不安が減ります。
復職の前に、何を準備すればいい?
準備は、研修で手技を思い出すこと、働ける条件を書き出すこと、戻りたい分野の変化を押さえることの3つです。
ナースセンターの再就業支援研修を受ける
都道府県ナースセンター(都道府県の看護協会が運営)では、離職した看護職向けの再就業支援の研修を行っています。技術の演習や知識の講義などがあり、内容や費用、日程は都道府県ごとに違います。お住まいの地域の研修は、日本看護協会の中央ナースセンターが運営する無料の職業紹介サイト「eナースセンター」で探せます。
研修を受けたことは、面接でもそのまま話せる材料になります。「ブランクの間に何をしていたか」を聞かれた時に、具体的に答えられるからです。
働ける条件を書き出す
「週に何日、何時から何時まで働けるか」「夜勤やオンコールはできるか」「子どもが熱を出した日に誰が迎えに行くか」。家族と話しながら、紙に書き出しておきます。条件がはっきりしていると、求人を見る時に迷いが減り、面接で働き方の相談もしやすくなります。
戻りたい分野の変化だけ押さえる
すべてを勉強し直す必要はありません。戻りたい分野の主なガイドラインの変更と、応募先が使っている電子カルテの種類くらいを押さえておけば足ります。細かい手順は、職場ごとに決まりが違うので、入職後に覚えるほうが確実です。
ブランクから戻る職場は、どう選べばいい?
ここでは、仕事中にすぐ相談できる人がそばにいる時間の長い順に、クリニック・外来、介護施設、訪問看護の3つを並べます。ブランク明けは、わからないことをその場で聞けるかどうかが不安の大きさを左右するためです。どの職場にも、入る前に知っておきたい大変さがあります。
クリニック・外来
医師やほかの看護師と同じ空間で働くため、迷った時にその場で確かめやすい職場です。診療科によって行う処置がある程度決まっているので、思い出す範囲を絞りやすい面もあります。
一方で、土曜も診療しているクリニックが多く、土曜の勤務を求められることがあります。受付終了の間際の患者さんで残業が続く所もあります。少人数で回しているため、人間関係がそのまま職場の居心地を左右しやすい点も、見学で確かめておきたいところです。
介護施設(老健・特養・グループホーム)
入所している方の暮らしに、長い時間をかけて関われる職場です。日中は介護職やほかの看護師と一緒に動くので、相談相手がいます。看護師が担う医療処置の範囲は、施設の種類や入所している方の状態で違うため、見学の時にどんな処置があるかを聞いておくと、準備する手技を絞れます。
ただし、夜勤やオンコールのある施設では、看護師が一人になる時間帯があります。入所している方の容体が変わった時に、医師へ連絡するかどうかを自分で判断する場面がある、ということです。夜の体制を面接で聞いておきましょう。
訪問看護
利用者さんの自宅を1件ずつ訪ね、その人の暮らしに合わせたケアをする職場です。日勤が中心で、入職後しばらくは先輩と一緒に回る同行訪問から始め、段階を踏んで一人で回るようにしているステーションもあります。
一方で、訪問先では一人です。利用者さんの状態が急に変わった時は、最初の判断と対応を自分一人で担います。夜間のオンコールがあるステーションでは、自宅で待機し、緊急時に対応する形で、手当が付きます。月に何回呼ばれるかはステーションで大きく違うので、面接で直近の実績を確かめてください。臨床経験の年数を応募の条件にしている所もあります。
時短やパートで戻る時は、何を確かめればいい?
最初から常勤のフルタイムで戻る必要はありません。週3日のパートから始め、生活が回るのを確かめてから日数を増やす人もいます。気をつけたいのは、正社員の時短勤務を前提に転職先を選ぶ場合です。
育児・介護休業法では、3歳未満の子を育てる人の短時間勤務について、労使協定があれば、継続して雇われた期間が1年未満の人を対象から外せます。つまり、入職してすぐは時短が使えない職場もあります。応募の前に「入職1年目から時短が使えるか」を確かめてください。
パートで戻る場合は、時給だけでなく、賞与や退職金の扱い、社会保険に入れる働き方かどうかも確かめておくと、あとで常勤に切り替える時の判断材料になります。
復職したあと、続けるために何を意識する?
続けるために意識したいのは、最初から完璧を目指さないことです。ブランクがあることは、採用した側もわかっています。わからない手順をそのままにせず、その場で聞くほうが、結果として信頼につながります。
勤務の時間も、最初は少なめで構いません。家族の協力が続くか、子どもの体調を崩しやすい季節を越えられるかを見てから、日数や時間を増やしていきます。戻ることより、戻ったあとに続けられることのほうが難しいので、無理のない形で始めましょう。
職場が合わないと感じた時も、すぐに「看護師に向いていない」と結論を出す必要はありません。合わないのが職場の形なのか、勤務の時間帯なのかを分けて考えると、次の選び方が見えてきます。
よくある質問
Q. ブランクが何年あると、復職は難しくなりますか?
何年を超えると戻れなくなる、という決まった線はありません。採用する側が気にするのは、期間の長さそのものより、いまどのくらい動けそうかです。研修を受けた、戻りたい分野の変化を調べた、といった準備を伝えられると、期間が長くても話が進みやすくなります。
Q. 面接でブランクの理由は、どう伝えればいいですか?
育児や介護など、離れた理由を短く事実で伝え、そのあとに「いまは週何日、何時まで働けるか」と「戻るために準備したこと」を話します。理由を長く説明したり、謝ったりする必要はありません。
Q. 看護師の免許は、ブランクの間に更新が必要ですか?
看護師の免許に更新の手続きはありません。ブランクが何年あっても、免許はそのまま使えます。結婚などで氏名や本籍地が変わった場合は、籍の訂正の手続きが要るので、復職の前に済ませておきます。
Q. 夜勤なしで復職できますか?
日勤だけの求人は、クリニック・外来、健診センター、デイサービス、日勤のみの訪問看護などにあります。健診センターは給与がかなり低めで、経験できる看護の幅も狭くなりやすい職場です。デイサービスは医療の手技を使う場面が少なく、手技の感覚が戻りにくい面があり、給与も低めです。夜勤をしないぶん夜勤手当は付かないので、収入の見込みも合わせて確かめてください。
Q. 復職してから、どのくらいで慣れますか?
職場や業務、ブランクの長さで違うので、一律には言えません。応募の段階で「一人で担当を持つまでの目安」と「その間に誰が教えてくれるか」を聞いておくと、自分の焦りを測る物差しになります。目安より時間がかかっても、教える側と相談しながら延ばせる職場かどうかも見ておきたいところです。
「自分にはどんな戻り方が合うのか」と迷ったら、一人で抱えず相談してみてください。with Nursing のLINE相談では、ブランクのある方の勤務条件や働き方の整理を一緒に進められます。応募する求人が決まったら、面接の準備や書類の見直し、条件の相談も一緒に進めます。無理に転職を勧めることはありません。

