看護師が転職すると年収は下がる?|パターン別に計算した

「転職したいけど、年収が下がるのが怖い」

面談で最も多い不安がこれだ。特に夜勤ありの病棟から日勤の職場に移るケースでは、額面はほぼ確実に下がる。

ただし「年収が下がる=生活が苦しくなる」とは限らない。

家賃が月3万円下がれば年間36万円浮く。残業が月20時間減れば体力にも時間にも余裕が出る。年収の「額面」だけで判断すると、本当に大事な数字を見落とす。

ここでは転職パターン別に、年収だけでなく家賃や生活費を差し引いた後の「手残り」まで踏み込んで計算した。

用語メモ:手取りと手残り
手取り=額面年収から税金・社会保険料を引いた、実際に振り込まれる金額。
手残り=手取りから家賃などの生活コストを引いた、自由に使えるお金。同じ手取りでも、家賃の高い地域では手残りが少なくなります。
目次

そもそも「年収」だけ見ても意味がない理由

看護師の年収は、大きく分けて4つの要素で構成されている。

  • 基本給: 病院の給与テーブルで決まる。経験年数で上がるが、上昇幅は年3,000〜5,000円
  • 夜勤手当: 2交代制で1回11,000〜15,000円。月4回で年間52〜72万円
  • 残業手当: 月15時間で月2〜3万円。年間24〜36万円
  • 賞与: 年2〜4ヶ月分。病院の経営状態で大きく変わる

転職すると、この4つが同時に変わる。基本給が上がっても夜勤手当がなくなれば年収は下がるし、年収が下がっても家賃や通勤費が減れば手残りは変わらないこともある。

だから「年収がいくら変わるか」ではなく「家賃・生活費を引いた後に、毎月いくら残るか」で比較しないと、転職判断を間違える。

パターン1|病棟→クリニック:額面は▲100万円超、でも手残りでは?

最も多い転職パターンであり、最も年収が下がるパターン。

項目 病棟・夜勤あり(大阪) クリニック(大阪)
年収(額面) 約504万円 約372万円
内訳:基本給×倍率 536万×0.94(20代後半) 536万×0.94×0.88−夜勤手当0
月額手取り 約32.8万円 約24.8万円
家賃(1R想定) 4.8万円 4.8万円
生活費・通勤費 6.5万円 6.5万円
手残り(月) 約21.5万円 約13.5万円
差額 月▲約8万円

※大阪府・20代後半・独身のモデルケース。シミュレーター(with Nursing年収・手残りシミュレーター)の計算ロジックに基づく試算。

クリニックへの転職は、同じ地域・同じ家賃でも手残りが月8万円下がる。夜勤手当が月5.6万円消え、基本給の水準自体も下がるためだ。

ただし、地域を変えると話が変わる。 東京の病棟からクリニック(大阪)に転職した場合、月額手取りの差は約8万円。しかし家賃が月10万円→4.8万円に下がるため、手残りの差は月5万円程度に縮まる。

「月の手取りが8万円も減る」と聞くと絶望的だが、「家賃込みの手残りだと月5万円差」なら許容できる人もいる。数字の見方で判断は180度変わる。

パターン2|病棟→訪問看護:手残りはほぼ変わらない

年収を落とさず病棟を離れる、最も現実的なルート。

項目 病棟・夜勤あり 訪問看護
年収(額面) 約504万円 約509万円
計算 536万×0.94 536万×0.94×0.95+オンコール30万
月額手取り 約32.8万円 約33.1万円
手残り(月) 約21.5万円 約21.8万円
差額 ほぼ変わらない(△月0.3万円)

※同条件(大阪府・20代後半・独身)のモデルケース。

訪問看護は基本給の水準が病棟よりやや低いが、夜勤手当の代わりにオンコール手当(月2.5万円前後)がつく。結果、月の手取りはほぼ変わらない。手残りも月0.3万円の差にとどまる。

夜勤がなくなるのに月の手残りが変わらない。これが訪問看護が「手取りを落とさず病棟を離れるルート」と言われる理由だ。

ただし「訪問看護」とひとくくりにできないのが難しいところ。事業所によって「別の仕事」と言えるくらい環境が違う。

オンコール手当が月1万円のところもあれば月3万円のところもある。訪問件数のインセンティブがつく事業所と、まったくない事業所がある。賞与が年4ヶ月出るところと、1.5ヶ月のところがある。結果、同じ「訪問看護」でも月の手取りが8万円以上変わることは珍しくない。

それだけじゃない。教育体制、オンコールの頻度、移動手段(車・バイク・自転車)、利用者の重症度、スタッフの年齢層。どれも事業所ごとに違う。「訪問看護に行きたい」ではなく「こういう訪問看護がしたい」まで解像度を上げてから動いたほうがいい。

見学時に確認すべきは、オンコールの実際の出動頻度と、直近1年の離職率。この2つを聞くだけで、事業所の実態がかなり見えてくる。

パターン3|介護施設(日勤のみ):額面▲100万円だが生活コスト次第

項目 病棟・夜勤あり 介護施設・日勤のみ
年収(額面) 約504万円 約411万円
計算 536万×0.94 536万×0.94×0.90−夜勤手当42万
月額手取り 約32.8万円 約26.7万円
差額(額面) ▲93万円
差額(手残り/月) ▲約6.1万円

月の手残り差は約6万円。ただし介護施設は病院と比べて郊外に立地することが多く、家賃が下がるケースがある。大阪市内→郊外で家賃が月2万円下がれば、手残り差は月4万円程度に縮まる。

さらに残業がほぼない施設も多い。月15時間の残業がなくなれば、その分の時間を副業や自己投資に使える。月2〜3万円の副業収入があれば、手残りの差はほぼ消える。

パターン4|地域移動を絡めると逆転する

最も見落とされがちなパターン。地域を変えるだけで手残りが増えることがある。

項目 東京・病棟夜勤あり 福岡・訪問看護
年収(額面) 約535万円 約466万円
家賃(1R) 10.0万円 3.8万円
手残り(月) 約17.8万円 約20.6万円
差額 手取りは月▲5.8万円なのに、手残りは月△2.8万円

※東京都・20代後半・独身→福岡県・訪問看護のモデルケース。

月の手取りは約5.8万円下がる。でも家賃が月6.2万円安い。結果、手残りは月2.8万円増える。手取りは下がったのに、毎月自由に使えるお金は増えている。

これがwith Nursingのシミュレーターで「生活コスト込みの手残り」を計算できるようにしている理由。額面だけでは見えない「実際の暮らしやすさ」が、地域×職場の掛け合わせで大きく変わる。

年収が下がっても「正解」になる3つの条件

転職で年収が下がること自体は、問題ではない。問題になるのは以下の3つを確認せずに動いたとき。

1. 生活コスト込みで計算したか

額面が100万円下がっても、家賃・通勤費・残業減で手残りが変わらないケースはある。逆に、額面が変わらなくても住む場所が変わって生活コストが上がれば実質減収。数字で確認しないと判断できない。

2. その働き方を何年続けられるか

夜勤月8回で手取り30万円超。35歳まではいける。でも40歳でも同じペースを維持できるか。5年後・10年後に持続可能な働き方かどうかを含めた判断が必要。

3. 下がった分を取り戻す手段があるか

夜勤がなくなった時間で副業する、資格を取る、訪問看護の管理者を目指す。年収が下がった分を中長期で取り戻すプランがあるかどうか。

自分のケースで計算してみる

ここまでのモデルケースはあくまで一般的な条件での試算だ。実際の年収変化は、あなたの経験年数・地域・家族構成・転職先の職場タイプで変わる。

with Nursingの年収・手残りシミュレーターでは、都道府県・年齢・職場タイプ・家族構成を選ぶだけで、年収だけでなく家賃や生活費を差し引いた手残りまで自動計算できる。東京と地方の比較も一目でわかる。

→ 年収・手残りシミュレーターで計算してみる

「年収が下がるから転職できない」は、実は計算していないだけのことが多い。額面の数字に怖がる前に、まず「手元にいくら残るか」を出してみてほしい。答えが見えると、動けるようになる。

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よくある質問

看護師が転職すると年収は必ず下がりますか?

職場タイプによります。病棟→訪問看護の場合はオンコール手当があるため年収はほぼ横ばい。病棟→クリニックは80〜130万円下がるケースが多いです。地方から都市部への転職では上がることもあります。

年収が下がっても転職したほうがいいケースはありますか?

家賃や生活費が下がる地域に移る場合、額面は下がっても手元に残るお金が増えるケースがあります。また、夜勤に依存した年収は30代後半から体力的に維持が難しくなるため、早めに持続可能な働き方に移行するメリットがあります。

看護師の年収シミュレーションはどうやればいいですか?

with Nursingの年収・手残りシミュレーターでは、都道府県・年齢・職場タイプ・家族構成を選ぶだけで、年収と生活コスト込みの手残りを自動計算できます。転職前後の比較が具体的な数字で確認できます。

この記事の監修者
株式会社じょいなす 代表取締役 / 臨床工学技士
元臨床工 学技士。病院勤務を経て、看護師の転職支援事業を立ち上げ。年間300人以上の面談を 代表自ら対応し、一人ひとりのキャリアに向き合っています。
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