看護師のバーンアウト(燃え尽き症候群)は、仕事へのやる気が出ない、患者さんに優しくできない、休日も何もする気力がない、といった状態が続くことで表れます。休んでも気力が戻らない時は、早めに誰かへ話してください。気分の落ち込みや興味の喪失が続く場合、厚生労働省の「こころの耳」は、うつ病を「症状が2週間以上継続することにより、従来の社会生活が困難になる状態」と説明しており、2週間はひとつの目安になります。
看護の仕事は、患者さんの苦痛に向き合い続け、夜勤で生活のリズムも崩れやすい仕事です。つらさを感じるのは、あなたの弱さだけが理由ではありません。
私たちは、つらさの解決を転職だけに結びつけるつもりはありません。バーンアウトとは何か、兆候の見分け方、今日から始められる対処、医療機関に相談する目安、職場を変えるかどうかの順にまとめました。
バーンアウトとは、ただの疲れと何が違う?
バーンアウトは、仕事への情熱やエネルギーが尽き、心と体が消耗した状態です。ただの疲れは休めば戻りますが、バーンアウトは休んでも戻りにくく、仕事そのものへの気持ちが離れていく点が違います。
アメリカの心理学者マスラックは、バーンアウトを3つの特徴で捉えました。看護の現場では、次のような形で表れます。
| 特徴 | 中身 | 看護の現場での表れ方 |
|---|---|---|
| 情緒的消耗感 | 感情的に疲れ果て、何も感じなくなる | 患者さんの話を聞いても心が動かない、勤務が終わると何もできない |
| 脱人格化 | 相手に冷淡になり、事務的に接する | ナースコールを負担に感じる、患者さんを「業務」として見てしまう |
| 個人的達成感の低下 | 自分は役に立っていないと感じる | ケアの手応えを感じられず、仕事を続ける意味が分からなくなる |
3つは同時に出るとは限りません。最初に気づきやすいのは情緒的な消耗で、患者さんへの接し方の変化は、周りが先に気づくこともあります。
看護師がバーンアウトになりやすいのは、なぜ?
感情を使う負担、夜勤による睡眠の乱れ、職場の人間関係、命に関わる緊張が、同じ時期に重なりやすい仕事だからです。
感情を使い続ける負担:患者さんの苦痛や不安に寄り添い続けることは、それだけで気力を使います。自分の感情を抑えて「良い看護師」でいようとする負担が、少しずつ積み重なります。
夜勤による睡眠の乱れ:厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023は、交替制勤務に従事していない人と比べて、従事している人の心血管系疾患の発症リスクが1.15倍とする報告を紹介し、交替制勤務では睡眠の不調などの健康リスクに注意が必要としています。眠りが浅い日が続くと、ストレスに向き合う余裕も減ります。夜勤明けの過ごし方は夜勤明けの健康管理にまとめています。
職場の人間関係:日本医療労働組合連合会の看護職員の労働実態調査(2022年)では、パワハラを受けたことが「よくある」「ときどきある」と答えた人が合わせて34.5%でした。人間関係のつらさは、仕事への気持ちを削る大きな要因になります。
命に関わる緊張と、報われない感覚:一つの判断が患者さんの命に関わる緊張は、勤務の間ずっと続きます。どれだけ手を尽くしても状態が良くならない、亡くなる患者さんを見送る、という経験が重なると、達成感を持ちにくくなります。
バーンアウトの兆候は、どう見分ける?
気力・睡眠・人への接し方・体の不調の変化が、続いているかどうかで見分けます。次の項目のうち、当てはまる状態がしばらく続いていないかを確かめてください。チェックの数で判断できるものではないため、気になる時は医療機関や産業医に相談してください。
- 出勤前に強い憂うつ感がある
- ナースコールが鳴るたびに「また呼ばれた」とイライラする
- 以前は好きだった仕事に興味を持てなくなった
- 休日も仕事のことが頭から離れない
- 食欲が落ちた、または食べ過ぎるようになった
- 眠れない、または寝ても疲れが取れない
- 小さなことで涙が出る
- 「自分がいなくても問題ない」と感じる
- 同僚との会話を避けるようになった
- 頭痛・胃痛・肩こりなどの体の不調が増えた
自分では気づきにくい変化もあります。家族や同僚から「最近元気がない」と言われたら、それも手がかりの一つです。
バーンアウトかもしれない時、何から始める?
始めるのは、休むこと、つらさを言葉にすること、一人で抱え込まないことの3つです。
まず休む:「休んだら迷惑がかかる」と思うかもしれません。ただ、限界を超えて倒れてしまうほうが、チームへの影響は大きくなります。有給休暇を使い、仕事から離れる日を作ってください。
つらさを言葉にする:「辛い」だけでなく、何が辛いのかを書き出してみてください。人間関係なのか、業務量なのか、夜勤なのか。原因が分かると、相談する相手と頼むことがはっきりします。
完璧を手放す:「全ての患者さんに最善のケアを」という理想は、自分を追い詰めることがあります。今日できることを、できる範囲で進めれば十分です。
職場で相談する:同僚・先輩・師長・産業医など、話しやすい相手に自分の状態を伝えます。夜勤の回数、受け持ちの人数、委員会の役割など、調整してほしいことを具体的に伝えると、職場も動きやすくなります。相談することは甘えではありません。同じ病院の中での異動も、環境を変える一つの方法です。
職場で相談しにくい事情がある時は、外の窓口も使えます。厚生労働省の総合労働相談コーナーは、職場の問題を面談や電話で相談でき、予約は不要で無料です。
医療機関に相談したほうがいいのは、どんな時?
次のような状態が2週間以上続いている時は、心療内科・精神科や産業医への相談を考えてください。こころの耳は、うつ病を「症状が2週間以上継続することにより、従来の社会生活が困難になる状態」と説明しています。
- 眠れない日が続いている
- 食事がほとんど取れない
- 出勤前に涙が止まらない、吐き気がする
- 「消えてしまいたい」と感じることがある
これらは、うつ病などの心身の不調と関わっている可能性もあります。バーンアウトかどうかも含めて、判断は医師に任せてください。「消えてしまいたい」という気持ちが強い時は、2週間を待たず、その日のうちに医療機関や身近な人に連絡してください。こころの耳には、働く人のための相談窓口の案内もあります。
職場を変えるかどうかは、どう考える?
休む・相談するを試しても負担が変わらず、原因が今の職場の環境にある時は、職場を変えることも正当な選択肢です。日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」では、病院の正規雇用看護職員の離職率は2023年度で11.3%でした。職場を移ることは、看護師の働き方の中で特別なことではありません。
ただ、職場を変える前に、負担の中心が何かを見極めておきます。夜勤なのか、受け持ちの人数なのか、急変への緊張なのか、人間関係なのか。負担の中心によって、合う職場は変わります。どの職場にも別の負担があるため、今のつらさが減る職場かどうかを、面接や見学で確かめます。働き方の選択肢と、それぞれの大変な面は看護師の働き方の選択肢にまとめています。
この記事の対処が当てはまらない場合もあります。体の病気や家庭の事情が疲れの主な原因の時は、職場の調整より先に、その原因への対応が要ります。また、すでに眠れない・食べられない状態が続いている時は、職場を変える判断を急がず、まず医療機関で相談してください。大きな決断は、心身が落ち着いてからのほうが後悔が少なくなります。
よくある質問
Q. バーンアウトとうつ病は同じですか?
同じではありません。バーンアウトは仕事に関わる消耗の状態を指す言葉で、うつ病は医師が診断する病気です。ただ、症状が重なる部分があるため、気分の落ち込みなどが2週間以上続く時は医療機関に相談してください。
Q. バーンアウトで休職はできますか?
医師の診断書があれば、休職の制度を使える職場があります。制度の有無や条件は職場の就業規則で決まっているため、師長や人事の担当者に確かめてください。
Q. 休んだら職場に迷惑がかかりませんか?
一時的に負担はかかりますが、限界を超えて倒れるほうがチームへの影響は大きくなります。休むことは、長く働き続けるための選択です。
Q. 職場の誰に相談すればいいですか?
話しやすい相手からで構いません。同僚や先輩に話し、業務の調整が必要なら師長へ、心身の状態は産業医へ相談します。職場で話しにくい時は、総合労働相談コーナーなど外の窓口も使えます。
Q. バーンアウトの時に転職活動をしてもいいですか?
情報を集めることは構いませんが、大きな決断は、眠れる・食べられる状態に戻ってからがおすすめです。負担の中心が何かを整理してから職場を選ぶと、同じつらさを繰り返しにくくなります。
Q. 夜勤をやめれば、バーンアウトは良くなりますか?
夜勤が負担の中心なら、楽になる場合があります。ただ、原因が人間関係や業務量にある時は、夜勤をやめても変わらないことがあります。何がつらいのかを書き出してから考えてください。
つらさの原因が仕事量なのか、人間関係なのか、働き方そのものなのかを整理したい時は、私たち with Nursing のLINE相談もご利用ください。今の働き方や条件を一緒に整理するお手伝いをしています。無理に転職を勧めることはありません。

