申し送りは終わったのに、記録だけが残って今日も30分の残業。何を書けばいいか迷う時間が、いちばん長い——。
看護記録は法的な記録だ。医療法施行規則で「診療に関する諸記録」として2年間の保存が義務づけられている(助産録は保健師助産師看護師法で5年)。裁判やインシデント検証では証拠にもなる。だからこそ書き方には型がある。経過記録で広く使われるのがSOAP——主観的情報・客観的情報・アセスメント・計画の4つに分けて書く、問題志向型の記録方式だ。型を覚えれば、迷う時間は確実に短くなる。
看護記録は法的記録——だから型がある
「書いていないこと=やっていないこと」。看護記録の世界ではこう扱われる。実施したケアも、記録になければ証明できない。
日本看護協会の「看護記録に関する指針」(2018年)では、看護記録は4つで構成される。①基礎情報(既往歴・アレルギー等)、②看護計画、③経過記録、④看護サマリー。このうち毎日書くのが③経過記録で、その代表的な書式がSOAPだ。型に沿って書けば、抜け漏れも残業も減る。
SOAPのS・O・A・Pには何を書く?
SOAPは問題志向型記録(POS)の書式で、患者の問題ごとに4要素で書く。1968年にアメリカの医師ウィードが提唱した方式だ。
- S(主観的情報):患者本人の訴え。「夜に傷がうずく」「眠れなかった」
- O(客観的情報):観察・測定した事実。体温37.8℃、創部に発赤あり、SpO2 96%
- A(アセスメント):SとOから導く看護師の判断。「創部感染の初期徴候の可能性」
- P(計画):Aに基づく対応。「創部観察を2時間ごと、医師へ報告、疼痛時指示の鎮痛剤を使用」
ポイントは、SとOは事実、Aは判断、Pは行動とはっきり役割を分けること。ここが混ざると読めない記録になる。
アセスメント(A)が書けないのはなぜ?
SOAPで詰まるのは決まってA。SとOは書けても、Aの欄で手が止まる。
理由はシンプルで、Aだけが「事実を書き写す」のではなく「事実を根拠に何が起きているかを言語化する」ステップだからだ。コツは型に乗せること。「Oの〇〇とSの△△から、□□が考えられる」の形で書く。たとえば「O:創部発赤・体温37.8℃、S:傷がうずく、A:創部感染の初期徴候が疑われる」。事実と判断を1文で橋渡しすると、Aは書ける。
逆に、Oに「不安そう」「つらそう」と書くのは誤り。それは観察した事実ではなく解釈だ。Oには「硬い表情で何度もナースコールを押す」と事実を、判断はAに回す。
そのまま使えるSOAP例文は?【術後・疼痛・転倒】
問題(#)ごとに3例を示す。日付・数値は自分のケースに置き換えて使ってほしい。
#1 術後創部(術後1日目)
S:「傷の周りが熱っぽい感じがする」 O:創部に軽度発赤あり、体温37.8℃、CRP上昇。ドレーン排液は淡血性で性状変化なし。 A:創部感染の初期徴候の可能性。現時点で全身状態は安定。 P:創部観察を2時間ごとに実施。体温・CRPの推移を確認し、主治医へ報告。疼痛時指示の鎮痛剤使用を説明。
#2 術後疼痛
S:「夜中、痛みで2回目が覚めた」 O:NRS(疼痛スケール)7/10、表情硬い。前回鎮痛剤使用から6時間経過。 A:疼痛コントロールが不十分で睡眠に影響。 P:指示内の鎮痛剤を使用し、30分後に再評価。疼痛時の早めの申し出を本人へ説明。
#3 転倒リスク
S:「夜中、一人でトイレに行ける」 O:入眠剤を内服中。歩行時にふらつきあり、Hendrich転倒リスク評価で高リスク。 A:入眠剤の影響で夜間転倒リスクが高い。本人にリスク認識が乏しい。 P:離床センサーを設定。夜間排泄時はナースコールを依頼。歩行時付き添いを継続。
SOAPとフォーカスチャーティングはどう使い分ける?
施設によってはフォーカスチャーティング(DAR)を採用している。両者の違いを押さえておくと、どちらの様式でも書ける。
| 項目 | SOAP | フォーカスチャーティング(DAR) |
|---|---|---|
| 単位 | 患者の問題(#)ごと | 出来事(フォーカス)ごと |
| 構成 | S・O・A・P | D(情報)・A(行動)・R(結果) |
| 得意 | 継続的な経過の追跡 | 単発の出来事を簡潔に記録 |
SOAPは問題を継続して追うのに向き、DARは「転倒した」「急変した」など1つの出来事への対応と結果を端的に残すのに向く。最終的には所属施設の様式に合わせる。
よくある質問
Q. 看護記録は手書きと電子カルテで書き方が変わる?
書く中身は変わらない。電子カルテが主流だが、SやOに何を書くか、Aで判断を言語化するという原則は同じ。電子カルテはテンプレートがある分、空欄を埋めるだけにならないよう、Aを自分の言葉で書くことを意識する。
Q. 略語は使っていい?
施設で承認された略語のみ使う。看護記録は法的記録で、誰が読んでも誤読されないことが前提。自己流の略語や、同じ略語が複数の意味を持つもの(例:BS=血糖/呼吸音)は避け、迷う場合は正式名称で書く。
Q. 記録を間違えたら修正していい?
訂正はできるが、改ざんは厳禁。紙の記録は二重線と訂正印で元の記載を残す。電子カルテは修正履歴が自動で残る仕組みになっている。「消して書き直す」ではなく「訂正の事実を残す」が原則だ。

