令和8年度(2026年度)の診療報酬改定は、診療報酬本体が令和8年6月1日に施行されました(薬価は令和8年4月1日施行)。看護師の働き方に関わるのは、賃上げに向けたベースアップ評価料の見直し、訪問看護の評価、看護職員と多職種の協働の評価、急性期の看護必要度の見直し、地域包括ケア病棟の評価の5点です。厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定項目の概要」では、令和8年・9年度それぞれ+3.2%分(看護補助者・事務職員は5.7%)の賃上げに向けて、ベースアップ評価料を見直すとしています。
「診療報酬改定」と聞くと遠い話に感じるかもしれません。ただ、病院や訪問看護ステーションが受け取る報酬のルールが変われば、看護師の配置、業務の分け方、給与にも影響が出ます。
影響の出方は、勤務先が何を届け出て、どう対応するかで変わります。私たちは、制度の変化だけを理由に転職を勧めるつもりはありません。改定の中身と、勤務先で確かめたいことを順に整理しました。
診療報酬改定は、なぜ看護師の給与や配置に関わる?
診療報酬は、医療機関が患者さんに医療を提供した対価として受け取る報酬で、2年に一度、どの医療行為にいくら支払うかが見直されます。看護師に直接関係するのは、看護師の人数や配置が入院料などの算定要件に含まれているからです。「7対1」「看護必要度」といった言葉も、この算定要件の一部です。
もう一つの経路が賃上げの評価です。ベースアップ評価料のように、職員の賃上げに充てることを前提にした評価があり、届け出た医療機関がその分を給与に反映します。どちらの経路も、決めるのは勤務先です。
5つの変更を一覧にすると、次のとおりです。
| 変更 | 内容 | 看護師が確かめること |
|---|---|---|
| ベースアップ評価料 | 令和8年・9年度それぞれ+3.2%分の賃上げに向けた見直し。夜勤手当にも充てられる | 届出の有無と、給与のどこに入るか |
| 訪問看護の評価 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)の引き上げと、新しい療養費 | 応募先・勤務先の届出と賃上げの配分 |
| 看護・多職種協働加算 | 看護職員と多職種が病棟で協働する体制を評価 | 病棟の役割分担の変わり方 |
| 看護必要度 | 救急患者応需係数を加えた指数で基準を判定 | 業務の負担と病院の方針 |
| 地域包括ケア病棟 | 初期加算の対象拡大と包括期充実体制加算の新設 | 退院支援・在宅連携の業務 |
給与に関わる見直しは、何が変わった?
中心は、冒頭で触れたベースアップ評価料の見直しです。対象となる職員には、事務職員や40歳未満の医師なども加わりました。
夜勤に関わる見直しもあります。夜勤職員を確保する観点から、評価料による収入を夜勤手当に充てることが可能になりました。参考までに、日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」では、定額の夜勤手当を支給する病院の二交代制で、夜勤手当は1回あたり平均11,368円です。
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訪問看護では、何が変わった?
ステーションの賃上げに向けた評価が引き上げられました。訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は、現行の780円から、改定後は1,050円(令和8年6月〜令和9年5月・新たに賃上げを行う訪問看護ステーションの場合)になり、継続的に賃上げを実施しているステーションは1,830円です。
新しい評価も加わりました。精神科訪問看護を地域と連携して提供するステーションを評価する機能強化型訪問看護管理療養費4と、高齢者向け住まい等に併設・隣接するステーションが24時間体制で頻回に行う訪問看護を1日あたりでまとめて評価する包括型訪問看護療養費です。
ステーションの収入の柱が変わると、採用や待遇の考え方にも影響します。転職先として訪問看護を考えている方は、応募先がベースアップ評価料を届け出ているか、賃上げをどう配分しているかを、面接で聞いてみてください。
病棟の働き方には、何が起きる?
病棟では、業務の分け方と入院料の基準の両方が見直されました。
多職種で病棟を支える体制の評価
看護職員と、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・管理栄養士・臨床検査技師が病棟で協働し、指導や診療の補助を行う体制を評価する「看護・多職種協働加算」が新設されました。あわせて、ICTなどを活用して看護業務の負担を軽減したうえで適切に看護を行える体制がある場合は、1日に看護を行う看護職員数等の基準を1割以内の範囲で柔軟にする見直しも入っています。
病棟での役割分担が変わる可能性があります。何を他の職種に任せ、何を看護師が担うのかは、病院ごとに決まります。
急性期の看護必要度の見直し
急性期一般入院料などで使う「重症度、医療・看護必要度」は、対象となる治療や処置が追加されました。さらに、病床あたりの年間救急搬送受入件数に応じた救急患者応需係数を加えた指数で、基準を満たすかどうかを見る形になりました。基準を満たせない場合は、より低い区分の入院料を届け出ることになります。
基準を満たすための体制づくりで、看護師の業務の負担が増える可能性があります。病院の方針は施設ごとに異なるので、勤務先の考え方を確かめておくと安心です。
地域包括ケア病棟の評価
地域包括ケア病棟では、在宅患者支援病床初期加算の対象が、救急搬送された患者から緊急入院した患者に広がりました。在宅医療や介護保険施設の後方支援に一定の体制と実績を持つ、許可病床200床未満の地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟を評価する「包括期充実体制加算」も新設されています。
退院支援や在宅との連携の業務が増える可能性があり、退院調整に関心がある看護師にとっては、経験を活かす場面が広がります。
改定を受けて、勤務先で何を確かめる?
最初に確かめたいのは、勤務先がベースアップ評価料を届け出ているかどうかです。届け出ていれば、賃上げの分が基本給・手当・夜勤手当のどこに入っているかを、給与明細と就業規則で見ます。分からないときは、師長や事務部門に尋ねてください。
次に、病棟の体制の変化です。看護・多職種協働加算や、ICTの活用による基準の柔軟化を取り入れるかどうかで、病棟の業務の分け方は変わります。特定行為研修(看護師が手順書により一定の診療の補助を行うための研修)に関心がある方は、勤務先に手順書を作る医師や体制があるかも含めて考えると、受講後に活かせるかが見えてきます。
この記事の内容が当てはまりにくい職場もあります。介護老人保健施設・特別養護老人ホームのように介護報酬で運営される施設や、保育園・企業など医療機関ではない職場では、診療報酬の改定は給与に直接は結びつきません。また、介護保険で提供する訪問看護は、介護報酬の側で決まります。
よくある質問
Q. 2026年度の診療報酬改定は、いつから適用されますか?
診療報酬本体は令和8年6月1日施行、薬価は令和8年4月1日施行です。訪問看護ベースアップ評価料などは、令和8年6月〜令和9年5月と令和9年6月以降で区分が分かれています。
Q. 診療報酬改定で看護師の給料は上がりますか?
勤務先の対応次第です。改定は令和8年・9年度それぞれ+3.2%分の賃上げに向けてベースアップ評価料を見直しましたが、届け出るか、収入をどこに充てるかは医療機関が決めます。
Q. ベースアップ評価料の収入は、夜勤手当に使えますか?
使えるようになりました。夜勤職員を確保する観点から、評価料の収入を夜勤手当に充てることが可能になっています。実際に夜勤手当を上げるかどうかは、勤務先の判断です。
Q. 訪問看護ステーションで働く看護師に関係する見直しは?
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)が780円から1,050円(新たに賃上げを行うステーション・令和8年6月〜令和9年5月)に、継続的に賃上げを実施しているステーションは1,830円になりました。機能強化型訪問看護管理療養費4と包括型訪問看護療養費も新設されています。
Q. 看護職員数の基準の「1割以内の柔軟化」とは?
ICTなどで看護業務の負担を軽減したうえで、適切に看護を行える体制がある場合に、1日に看護を行う看護職員数等の基準を1割以内の範囲で柔軟にする見直しです。取り入れるかどうかは病院ごとに違います。
Q. 改定をきっかけに転職を考えたほうがいいですか?
制度の変化だけで決める必要はありません。まず勤務先の届出と給与への反映を確かめ、そのうえで今の職場の待遇や働き方に納得できるかを考えるのが順番です。
with Nursing のLINE相談では、改定で自分の給与や働き方がどう変わりそうかを、一緒に整理できます。迷ったときの相談先としてお使いください。

